後輩に脅されまして
営業事務の戸川ミツル。妄想族たる彼の秘密の趣味は、会社の倉庫で隠し撮り写真をおかずに自慰にふけること。こんな場所に誰もこないと高をくくり、その日も、昼休みにひとり書類倉庫で行為に没頭しているところを、後輩営業・小野原に見つかってしまい――。
本日のおひとり様のお供は、あそこもデカそうな営業部エース。
――と思ったが、営業部長にしよう。
スマホの画面をスライドさせれば、社員旅行で隠し撮りした浴衣姿の部長が現れた。ゆるくあわせた襟元から、たくましい胸と色気漂う鎖骨がのぞいている。
――温泉で鉢合わせた俺と部長。湯あたりした俺が介抱のために部屋に連れ込まれて、そのままうっかり勢い抱かれてしまう、そんな妄想。
「ん…」
ゆるく立ちあがったペニスを扱く。
リア充どもはウキウキ昼食タイムだが、俺はひとり書類倉庫に籠っている。昼を食べると眠くなる、というのは建前だ。中だるみするこの時間、自慰行為で午後の活力をチャージする。これが俺の昼休憩の過ごし方である。
社内ネットワークにアクセスすれば、必要なデータはそろうようになった昨今、書類倉庫は誰も片付けないからあるだけで、俺以外、誰もこない。
――そう、高をくくっていた俺がいました。
「…」
現状を報告しよう。
「先輩、いつもお昼にいないから、どこにいるのかと思っていたんですが…」
子犬系男子の小野原涼太、23歳。花形営業部の新人にしてお姉さまたちの期待の星が、目の前にいます。ペニスへの刺激だけでは足りなくなり、ちょうど後ろに指を入れたそのときの出来事でした。
小野原は呆然(ぼうぜん)とする俺をしばらく眺めて、おもむろにポケットからスマホを取り出した。
カシャとシャッター音が聞こえて、不意に俺の時間が戻ってくる。
「っ、今…」
尻に指が入っている俺を、
「撮っちゃいました。先輩、真面目そうに見えて…」
「小野原、くん。その写真」
「ばらまかれたくなかったら、僕の言うこと聞いてくださいね」
小野原はほんのり頬を染め、そうのたまった。
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