義兄、雌犬ト化ス (Page 4)
もちろん大学生である彼女が“まとも”なバイトで子供1人を育てられるワケがない。誰にでも従順な沙百合は、夜の商売に手を出していた――しかし、それだけでは金が足りずに、今度は自分の身体を売ろうとしていたのだ。
沙百合がこんな家庭事情を出会って間もない俺に聞かせてくれたのは、俺が学校内でも有名な資産家の息子だったからだと思う。こちらは誰もが羨む美人を傍に置いておきたいだけ…その条件に彼女は合致していた。
ほどなくして、俺達は付き合い始め、彼女にも多額の援助をしてやった。金を渡している間は彼女を好きなように扱えたし、支配している快感は何者にも代え難いものだった。
好きなときに抱き、何か気に食わないことがあれば相手を罵って、ストレスを発散する。お互い愛などはない。利害関係で結ばれ、文句を口にしない相手は俺にとって打って付けだった。
現在の職場に内定が決まり、そこそこの地位を築き上げた30歳の頃…取引先から『キャリアアップを考えているなら、早いうちに結婚して、子供を儲(もう)けた方がいい』と話をされる機会が増え、俺は沙百合にプロポーズをした。確かに独身のままじゃ商談相手にナメられてしまう。沙百合とは『籍を入れたらすぐに子供を作ろう』と話をしていた。
しかし…彼女は結婚の条件として、当時中学生の絢斗との同居を持ち出したのだ。『弟と一緒に暮らせないのなら、結婚なんてしたくない。あなたに合う都合のいい人を別に探してくれない?絢斗はね、私にとって唯一の肉親なのよ』と出会って初めて、俺の意見を聞き入れなかったのである。
沙百合が俺に歯向かうだなんて考えもしなかったのだが――アイツ以上に都合のいい女なんていない。結婚後、パートなんかに精を出したところで稼げる額は決まっているのだから、面倒を見てやるフリをして、俺や、自宅を訪れた会社連中にご機嫌とりをするお人形さんでいてもらうつもりだった。沙百合には、誰もが振り向く美貌がある。彼女を見れば何かと鼻の高い上司も小言を言わなくなるだろう。
俺は絢斗が叫んだ通り、己の見栄で彼女と結婚したのだった。とはいえ、絢斗の扱いには手を焼いた。彼は思春期とは思えないくらい沙百合にベッタリで、服なんかも沙百合が選んだものを喜んで着ていたし、学校の勉強も塾に通わず、彼女に見てもらっていた。
コイツが同居していたのでは、いつまでたっても子供なんてできやしない。生活費を入れてやっている旦那を差し置いて、弟の相手ばかりする沙百合に嫌気を募らせていた俺は、休日になると真昼間から翌日まで彼女を乱暴に抱いた。『弟に気付かれちゃうから!』と白い肌を紅潮させ、俯く女を――俺の支配下に置かれた女を犯すのは、気持ちがよくて堪らなかったのだ。
このとき俺は知らなかった。いや、知らないフリをしていた。自分が沙百合に渡している月2万の生活費じゃ、3人分の食費にもならず、ましてや高校進学を控えている絢斗は、将来の学費も必要だったのだ。
最近のコメント