3月は別れと出会いの季節です
真野恵介は仕事に疲れ果て、性欲を発散するためにゲイ向け風俗を利用することにした。目に入ってきたのはタケシ。15年前の高校時代、苦い過去を思い出させる男だった。ホテルの一室でタケシに「先輩」と呼ばせてセックスを楽しんでいるうちに、蓋をしていた記憶がこぼれだしていく…
「俺、先輩がいつも不安だったの知ってます。一番後ろからずっと見てましたもん。大丈夫、先輩なら絶対大丈夫ですよ!」
昔そんなふうにいってくれる後輩がいた。
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俺は真野恵介33歳。
昨年末に半年付き合ったゲイの恋人と別れてからこの3ヶ月、毎日仕事に明け暮れていた。
営業だから、頑張ればその分が成果となって現れるし、めんどくさい後輩指導からも離れていられるから、ひたすら取り引き先に出向いては雑務に没頭する毎日を送っていた。
それがとうとう上司につかまり、「最近がんばってるな!後輩も連れて行ってノウハウを教えてやってくれよ」などとお褒めの言葉をいただいてしまい、それからはお供付きの日々だ。
そして、この後輩がとんでもなく使えるいい奴なもんだから、かえって俺の心は荒んでいった。
裏も表もいいヤツと一緒にいるのは心底疲れる。
外面がいいだけの俺のような人間は、こういうキラキラした人間のそばでは、黒くシミだらけの雑巾のような気分になる。
その日も、キラキラの後輩と駅で別れて背中を見送った後繁華街に向かった。
どうにもむしゃくしゃが収まらない。
しばらくセックスもしてなければオナニーもしていなかったから、性欲だけでも晴らしたいと思い、人生二度目のいわゆるゲイ向け風俗にお世話になることにした。
数枚の諭吉は消えることになるが、それでも性欲が満たされるのであれば構わない。
まだ春とはいい難い3月の夜、早速カフェに入るとスマホを開き、温かいカフェラテを飲みながら男の子を選ぶ。
移り変わりが早いのか、以前会った子はいなくなっていた。
写真を加工しているのであろうが、みんなキラキラしていて綺麗な子ばかりだ。
仕事で疲れヨレヨレの俺とは大違いだ。
頬杖をつきながらページを流していると、見覚えのあるホクロが目に入り、スクロールしていた指がピタリと止まる。
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