3月は別れと出会いの季節です (Page 4)

「先輩、中すごい動いてる。気持ちいい?」
「あっ、タケシっ、いいよっもっと、動いてっん」
リズミカルに突き上げるタケシの動きに合わせ、うつ伏せでシーツに押しつけられたペニスが擦られて痛い。

腰をよじると、タケシはそれを察したのか、背後から片脚を抱えて体位を変えた。
より深く奥まで犯され、突かれる度に奥がぎゅっと締まるのが自分でわかる。
いつもより、とても感じている俺がいる。

「ふっ、くっぁんっ、あっおくっすごいっきもちいっいあぁっ!」
「先輩っ、そんな締めないでよ、気持ちよすぎるっ」
「あっ、ツヨシっ、んんっ」
「…っ、せんぱいっ好きだよっ」
「あっ、俺も好きっんんぁあ、もうっ、いくっ」

高揚感に惑わされ、うっかり「ツヨシ」と呼んでしまった事に後から気づいたが、タケシは何もいわずに付き合ってくれたようだ。
「も、もう出るっ!ツヨシ、すきっ好きだっああぁっ!」
「俺もっ、もうっいくっ」
2度目にも関わらず、俺は激しく精液を撒き散らした。

*****

気持ちよさに頭がぐちゃぐちゃになり、あの卒業式の苦い思い出が混じり込んで、急に切なさが込み上げてきた。
あの頃の俺はいつも、格好ばかりつけて泣き言なんかいえなかったけど、ツヨシの前ではなんとなく力を抜いて過ごせていた。
ツヨシだけは、大丈夫っていつもいってくれていたのだ。

いくら商売とはいえ、恋人と別れたこと、仕事のこと、俺の高校時代の思い出なんて懺悔されても迷惑だろうに、タケシは何もいわずに後ろから俺を抱きしめながら話を聞いてくれた。

初めて会って、そしてもう会うことはないと思うからなのか、するすると本音がこぼれ落ちる。
「もう、カッコつけてばっかりの自分になんか疲れちゃってさ。頑張るのやめようかなぁ」
「…大丈夫、先輩なら絶対大丈夫ですよ」
「ありがとう」

あっという間に終わりの時間がやってきた。
セックスの後のピロートークにはうっとうしかったろうか、身支度を整えたタケシは金を受け取ると何もいわずにさっさと部屋を出ていった。

1人になって、性欲は満たされたはずなのに心にポッカリと大きな穴が空いたような気分になり、虚しさが込み上げてくる。
ツヨシはどうしているのだろうか、俺のこと覚えているのか。そんな事を今更考えてもどうしようもないのに、タケシのせいで思い出さずにはいられない。
冷蔵庫からビールを出すと、ベッドでくつろぎながらスマホを取り出した。
ダメもとと思いつつ、SNSでツヨシのフルネームを検索してみた。珍しい苗字だから見つかるかもしれない。

コンコン

扉をノックする音がする。

スマホの画面には、先ほどまで一緒にいた男が映し出されている。

おそるおそる扉を開けると、そこには泣きそうな顔をした男が立っていた。

Fin.

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