恋より深く、愛より重い (Page 2)
キスをしたまま、雪崩るようにベッドに押し倒されて、さらに口づけが深くなる。薄く開いてしまった唇からスルリと舌が差し込まれると、強烈なアルコール臭が鼻をつく。ニシは酒に弱かった。その香りだけでクラクラと脳髄が揺れるような感覚に襲われていた。
「ふぁ…んっ…!」
ツイと上顎を撫でられて、ニシの吐息に甘いうめきが混じった。
今日、ウメダがこの部屋に訪れた瞬間から、こうなるだろうことはニシも予想はついていた。思った以上に性急にコトを始めだしたとは思ったが、ウメダとセックスをすること自体は、ニシも嫌ではなかった。というのも、恋人なんて存在はもう3年はおらず、気になる異性がいるわけでもない。直近でしたセックスは3ヶ月前、そしてそのときの相手もウメダだった。
*****
ウメダとニシの出会いはもう15年も前になる。新卒で採用された今の会社の研修で、同じグループになったのがきっかけだった。同い年でお互いに関西出身ということもあって気があった。そのときはただ仲のいい同期ができたというだけだった。研修を終えてそれぞれの別の支店に配属されて、たまに仕事の愚痴なんかをメールでやり取りするぐらいだった。
それが変化したのは、社会人2年目の夏、大学生の頃から付きあっていた恋人にニシが振られたのがきっかけだった。結婚も少なからず視野に入れていた彼女に、「他に好きな人ができた」とあっさり振られ、愚痴の相手になってほしくてウメダを家に呼んだのはニシだった。強くもない酒をヤケになって飲んで、どうしようもなく酔っ払った末にウメダと関係を持ってしまったのだった。酔いの勢いと、若気の至りと、寂しさと、それらがどれか1つでも欠けていたら、そうはならなかっただろうと、ニシは今でも思っていた。
それからは、どちらからともなくたまに会って、身体を重ねた。ニシもウメダも異性愛者だったから、どちらかに恋人がいるときは、自然に会わないようになって、別れたらまた会うようになる。会って、セックスして、他愛のない会話をする。お互いに気の置けない、居心地がよくて、都合のよいセフレだ。ズルズルとそんな関係を続けて、気がつけば互いに独身のままアラフォーになっていた。
ニシの着ているスウェットをまくりあげて、ウメダは彼の胸にチュゥと吸い付いた。
「あぁっ…」
シーツに食い込むぐらい首を仰け反らせて、ニシは嬉しそうに喘いだ。ゆらゆらと漂うように浮かせた手をウメダの頭に乗せて、もっと…と強請るように髪をかきなでる。ウメダは舌先で、ニシの片方の胸の先端を弄りながら、もう片方の胸は爪先で引っ掻くようにいじめだした。
「やぁっ…ん、あ…」
「今日、いつも以上に感度よくない?」
楽しそうに言って、ツンツンとウメダは指の腹でニシの胸の膨らんだ突起を叩く。くぐもった声をもらして、ニシは肩をビクつかせた。
「なんやかんやで俺に会えんくて寂しかったんやろ?ニシ?」
「…なにがやねん。たった3ヶ月でそんな…っぁ」
反論するそばから首筋に舌を這わされて、ニシは言葉とは裏腹に下半身に熱がより強くなるのを感じていた。
「だって、なぁ?俺が北海道に3ヶ月間出向に行くって言ったとき、めっちゃ寂しそうな顔しとったで?」
「そんなわけあるかっ…」
「可愛いな。ニシ」
男に可愛いなんて言われて嬉しいわけないのに、ウメダの口から出るその言葉は、ニシの胸の奥を妙にくすぐってくるからこそばゆい。それを誤魔化すみたいに、ニシはウメダの股間に足の爪先を当てた。
「んっ…じゃぁ、寂しかったわけちゃうけど、溜まってるから…」
ゆるりと顔をあげたウメダに、ニシは悪戯っぽい笑みを見せた。
「早く、ウメダのちょーだい」
*****
最近のコメント