恋より深く、愛より重い (Page 4)
「あっあんっんぁっ!ひゃぁっあぁぁーっ!」
前戯で達していなかったとはいえ、上下に2、3度ピストンしただけで、ニシは激しく喘いで精を吐き出した。互いの腹にベタリとついた白濁が、触れあうたびにヌチャヌチとイヤラシく滑る音をたてた。
「は…ぁ、待って!ウメダっ!あかん、ほんまこれ、アカンやつ…っ――」
ブンブンと大きく首を振って、必死で叫ぶニシの目尻にはキラリと雫が光っていた。ただ、その懇願はウメダの性を煽るだけで、止まないどころか上下のピストンはさらに激しくなっていく。
それなりに防音効果もある鉄筋造のマンションとはいえ、大の男が上に男を乗せて揺れれば、どこからか微かにきしむような音がする。そんなことで躊躇してしまうような理性はとっくに消え去っているのだけれど。
串刺しのような形でウメダのモノが挿入っているせいで、よほど奥まで突かれているのか、ウメダがズンッと上下するたび、ニシは飛び上がるほどに体をビクつかせる。
「あっあっあっあ…っ、ひゃ、ぁ、やぁぁっ――!!」
抑えの効かない声を上げながら、ニシはビクビクっと全身を震わせる。ウメダの肩に置かれていただけだった腕は、今ではしっかりと首に巻き付いていて、両足もウメダの太ももをカッチリとホールドしていた。
「いいな、これ。めっちゃ愛されてるみたいやわお前に」
耳元でウメダが囁くと、ニシは血管の浮いた喉元を天に向け、さらに力強くウメダの体にしがみついてくるのだった。
ビクッと勃起した雄が苦しげに震えているのに、そこからはなにも吐き出されなかった。けれどニシはだらしなく口を開けて、ハクハクと浅い呼吸を繰り返している。その様子に、ウメダは嬉しそうに笑った。
「っこれ、メスイキってやつやな?どう?気持ち、いい?」
「ぁ…も、やめ…オカシくなりそうや、からぁっん!ひぁっぁぁ!!」
ニシが言った直後にまた、深く貫けば、紅潮した頬に涙の雫を零しながらニシは甲高く鳴いた。全身が性感帯になってしまったのかと思うぐらいに、ヒクヒクと感じているニシの乱れた姿に、ウメダも自身の限界がすぐソコまできているのを感じた。
ウメダは自分の身体にしがみついているニシをさらにグッと強く抱きしめて、スパートを決めるように激しく上下に揺らした。
「ええやん。オカシくなったら。俺の前なんやし」
「あんっあっあっあっウメダ…ぁ、もっまたっイキそ…ああっあ…!!怖いっ怖いよぉっ――っ」
なにか叫んでいないと不安だというように、パクパクと動いていたニシの唇に、ウメダは自分の唇を重ねる。グチリッと最奥の壁を貫いて、限界だった自身の欲を放てば、ビクビクっとニシのナカが痙攣した。重なった唇の端から、ツーっと一筋の唾液が垂れ落ちていた。
*****
「ニシ、これ読んどいて。問題なかったらこのまま進めるから」
情事後でまだ薄ぼんやりとした思考の中で、そんな言葉と共に急に手渡された書類を、ニシは「ん」と軽い返事で受け取った。特になにも考えずその書類に視線を落とす。
「はっ!?」
書類に書かれていた文字を確認したニシは、素っ頓狂な声を上げながらそれを2度見、いや、3度見した。そうしてから、気怠そうにアクビをしているウメダに視線を向ける。
「ちょぉ…なんよ、これ」
パサパサと手元の書類を振りながらニシが聞けば、目をこすりながらウメダは
「見た?」
とだけ短く問うてきた。
「いやいや、『見た?』とちゃうやん。なんでこんなん渡してくるん」
「なんでって、ニシに確認したいからやん」
「やから!なにを確認するん!」
語気を強めたニシの手に持たれた書類が、クシャ…と小さく鳴いた。その書類には『同性パートナーシップ制度』の文字がデカデカと印字されていた。
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