恋より深く、愛より重い (Page 5)
仕事関係だろうと深く考えずに受け取った書類が、パートナーシップ制度について詳しく書かれた内容だなんて、誰が想像できただろうか。そして、ウメダがそんなものを渡してきた理由もニシにはわからなかった。ただ、『問題がなかったらこのまま進める』とウメダが言った言葉を無視するわけにもいかないのだ。
「まず確認なんやけど、パートナーシップ制度?それを、申請したいと思ってるん?ウメダが?」
「うん」
「相手は?」
「お前」
マジか…とニシは小さく溜息を溢す。
「あの、ウメダさん、これの意味わかってます?」
「もちろんわかってるよ。ちゅうかその書類も俺が調べてわかりやすくまとめてやなぁ…」
「ほな言いたいんやけどさ。まず、俺とウメダ、恋人同士ちゃうやんか」
「うん。交際0日婚やな」
「やから!結婚になるんがおかしいやろ言うてんねん」
確かにセフレではある。けれどニシはそこに性欲以上の感情を持ったことはなかったし、当然ウメダもそうだと思いこんでいた。そもそもお互い、異性愛者だったはずだ。ただ、利害が一致して今日までこの関係を続けてきたのだ。それが突然、同性パートナーシップだなんて。2つ返事で受け入れられる内容ではなかった。
ウメダは、ニシが座っていたソファに並んで腰を下ろしてきた。ス…と伸びた手がニシの手の中の書類を1枚攫っていく。それをペラペラと仰ぎながら、落ち着いたトーンでウメダは言う。
「もう15年や」
「へ?」
「ニシと出逢って」
「せや、なぁ」
「それなりに出会いもあったし、付きあった人もいたで」
「うん…」
「でも結局、誰とも未来を見すえられへんかった」
それは、ニシも同じだ。この15年の期間、付きあった女性は当然いたし、片思いのまま諦めてしまった淡い恋もあった。ここ3年はもう、恋愛する気も失せてしまっていたが、機会があればとは思っている。
「恋愛が上手くいかんのは、俺が仕事中心の考え方やからかなーとか思ってたんやけど、もしかしたらニシがいるからかもって最近思うようになってん」
「は?」
「ビジネスライクな人間なんて社内にもいっぱいいる。けど先輩も後輩も結婚してる人はしてる。じゃあその人らと俺の絶対的な違いってなんやろって考えたら、ニシがいるかいいひんかちゃうのって」
「いや…なに言うてんのお前」
「ニシとセックスすること覚えて、最近まで気付かんかったんやけど、俺、ニシとのセックスが1番好きやねん。それに、2人でいるときの空気感とかな、色んな価値観とか、会話のテンポもやけど。あうなって思うのやっぱりニシやねん。ニシも言うてたやん。俺といると楽やって」
「それは友人として…」
「やから、友人から人生のパートナーになってって言うてんの。もしも俺になんかあったときにすべて託せるのは、お前だけやもん」
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