お付き合い始めてみました (Page 2)

「今日の夕飯何にしようか?」

「うーん、寒くなってきたし鍋だな」

「お、いいじゃん」

俺たちは遅めの昼食を近所のラーメン屋で食べて、スーパーに向かって歩いていた。季節は冬に向かって進み始めていて、日はすでに傾きかけていた。俺はふとアキの方を見る。そこには当然アキの整った横顔があった。アキは鼻筋が高く、身長も俺より少し高い。男ながらイケメンだと思っていた。これで家事全般できるというのだからずるい。

「律、あの返事のことなら気にしなくていいからな」

「え?」

「お前がどう返事したらいいかわからなくて困っているのは気づいてた。俺はお前がどんな返事をしても受け止めるつもりでいるから」

アキはそう言うと寂しそうに笑った。ああ、ちがうのにな、俺は唇をかみしめる。お前にそんな表情なんてさせたくないのに。俺はアキの小指をそっと握りそのまま前を向く。

「…これが俺の精一杯の気持ち」

俺は小さい声でそう言った。俺は恥ずかしくてアキの顔が見れなかった。

「…ありがとう律」

アキは小指で俺の指を握り返した。

*****

「あーしみる。まじでうまい」

アキはその日、つくね鍋を作ってくれた。

「そうか、それはよかった」

そう言いながらアキは白菜をほおばる。

「なあ、律」

「ん?」

俺は白米を口に運びながら返事をする。

「今日、お前のこと抱いてもいいか?」

「は!?」

突然のセリフに口に含んだものを吹き出しそうになる。抱くって、抱くってことだろうか。

「いやか…?」

「ちょ、ちょっと心の準備が…」

アキがそういう目で俺のことを見ているとは全く気づかなかった。しかし、確かに付き合う、というのはそういうことだよな、と俺は思い直す。俺はアキとそういうことができるだろうか?

「もし、抱かれてもいいというのなら俺の部屋に来てくれないか?」

「…わかった、ちょっと考える」

俺はアキに心の奥を見透かされたような気がしていた。

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