史上最高のバースデーパーティー ~ハタチは特別一生モノ!~ (Page 2)

「あれ?…これ、ケーキ?」

テーブルの隅でぺしゃんこで真っ黒なスポンジらしきものを見つけた将也は兄から離れてそれに駆け寄る。

「あ!そ、それは、マジで見んなし!」

「あはは、昔、母さんが失敗したパンケーキ思い出すよ」

屈託なく笑う姿に救われるような却って惨めなような気持ちになる友哉だが、楽し気な弟の様子には嬉しさを感じていた。

「ねぇ、いつも料理なんて大してしないのに、どうしたの?」

大きな目で見上げてわざとらしく訊ねてくる将也に思わず友哉は苦笑する。

「なんでって、お前の誕生日だろ?二十歳の」

「知ってる!マジで嬉しい」

心底嬉しそうに笑う将也が、最早天使に見える。

しかし、スポンジもどきの傍らに置いてあったホイップクリームを見つけた将也の笑みは昔から時折見せる悪戯っ子のそれに変わった。

「ねぇ、兄ちゃん、このケーキ、これからデコるとこだった?」

「ああ、そのつもりだったけど…この有様だからな。苺は普通に食べられるし、生クリームは…練乳代わりに付けてもいいよな」

至って普通に応える友哉だったが、将也の頭の中は違った様子で、再び兄に後ろから抱き着いた。

「にーいちゃん。俺、プレゼントも欲しい!」

「なんだよ、甘えただな。まぁでも、料理は失敗だし、いいぜ。好きなもん言えよ」

この言葉が、間違いだった。

「ありがと。兄ちゃん、大好き!」

そう言うと同時に耳に口付けた。

「へ!?ま、将也?」

スキンシップはどちらかと言えば友哉からの方が多かった。それ故に弟からの行為に驚きが隠せない。

「俺ね、兄ちゃんが欲しい」

少し下の方から聞こえる囁きに友哉の肩がひくっと震えた。

「…ダメ?」

甘えるような、少し拗ねたような、それでも少し大人びた声色。

「将也…お前…」

「ねぇ、俺だけ?兄貴の事、本気で好きだよ?」

友哉より少し背の低い将也に下へ引っ張られるように抱き寄せられ、耳元に響く甘い囁きは子供の頃の「好き」とは違って。

「ま、将也…俺は、その…」

視線を泳がせ、言い淀んでいる友哉に焦れて、強引に頬を両手で挟んで振り向かせ、唇を重ねる。

「んっ!」

驚いて切れ長の目が見開かれる。

同時にもつれて二人して床に崩れた。

「ねぇ、兄貴。俺、本気だよ?」

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