専属執事に願い事 (Page 2)
「成瀬、お前は僕が結婚した後どうするんだ?」
「私ですか?」
「変わらず傍にいてくれるのか?それとも僕の専属は外れるのか?」
「私はあなたのお傍にいますよ」
そう、これからも成瀬を傍に置いておくには、僕は結婚してこの家に留まらなければいけない。
それが唯一、成瀬と一緒にいられる条件だ。
「私はあなたが望むなら、なんだってしますよ」
「えっ?」
「どんなことでもおっしゃってください」
成瀬は僕の手をとり、跪いた。
言葉の意味がわからず戸惑っていると、そっと僕の手にキスをした。
「成瀬っ!?」
カッと頬に熱が集まる。
それを見上げて、成瀬はニヤリと笑みを浮かべた。
「そのお顔は驚きからですか?それとも照れていらっしゃるんですか?それとも別の感情ですか?」
「なんだよそれっ」
「柊哉坊ちゃん、結婚式までによく考えておいてくださいね」
そう言って、成瀬は部屋を後にした。
残された僕は、ボーッと出て行った扉を見つめる。
「気付いているのか?…」
僕が成瀬を好きだということに。
*****
成瀬と初めて出会った10年前、専属執事として紹介された成瀬に心を奪われた。
僕の専属になり、一緒にいればいるほど、成瀬の魅力にどんどん気付いて、子供ながらに「これは恋愛対象として好きなんだ」と自覚した。
けれど、その一年後に許嫁を紹介され、両親にこの家の僕の役目を教えられた。
以降、成瀬への想いはひた隠しにして、専属執事として傍に置き続けた。
それが唯一、僕が成瀬の傍にいられる方法だったから。
成瀬にももちろんバレないように隠してきた。
それなのに、さっきの行為。
僕の気持ちがバレているのか?
もしバレていたとして、なぜ成瀬はあんな期待させるようにキスなんて…。
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