仕事の指示は抱かれる暗号
入社から数年の南は上司の佐々木課長と不倫関係にあった。課長の奥さんに絶対にバレないよう、会う約束はメールや電話でのやりとりではなく、仕事の指示で会う場所が決まっていた。今日は「書類をシュレッダーに」の指示。南はその仕事の指示だけで課長に抱かれにいく。
「南くん、これシュレッダーにかけてくれ」
仕事中、デスクにやってきて佐々木課長は破棄する書類を俺に渡してきた。
書類をシュレッダーにかけるなんて、入社から数年が過ぎた俺に頼む仕事じゃない。新人にやらせればいい仕事をわざわざ頼んでくるのは、それが逢瀬のメッセージだからだ。
コピーを頼まれた時は仕事終わりにホテルで、ファイリングを頼まれたら休日に、そしてシュレッダーの場合は残業後に資料室で。
「わかりました」
渡された書類を受け取り了解した。俺が雑用を断れば逢瀬も断ったことになる。けれど数少ない誘いを断ることは出来なかった。
会いたいとスマホでメールを送ることも許されない。仕事中の合図のみでやりとりするのは、佐々木課長は結婚して子供もいるからだ。
*****
仕事が終わり、オフィスから誰もいなくなったことを確認すると、資料室へ向かった。
「はぁ…」
本当はこんなところで会いたくない。俺の気持ちがドアノブを回すのを躊躇わせる。ここに呼ばれるときはいつも早々に抱かれて終わりだから。もっとあなたの時間がほしい。
そんな躊躇も会いたい欲の方が勝り、資料室に入りドアのカギを閉めた。
「遅かったな。仕事終わったか?」
「はい」
本当は課長の時間に合わせて仕事をしていただけ。早く帰ろうと思えばできたのに。
「南くん、おいで」
会話もほとんどすることなく、資料が詰まった棚の間に引き寄せられた。腰に腕をまわし唇を貪られる。
「仕事が多い場合は他の人の助けも借りなさい。ほら、目の下に隈ができてるぞ」
舌を差し込まれ口内を隅々まで弄られたあと、目の下を撫でられた。
「せっかくのイケメンなのに」
「今日はあなたを待って残業してました」
「と…しても、いつも残業してるじゃないか。頑張りすぎはよくない」
顔全体にキスを落とされながら、彼の甘く優しい言葉に頭が蕩けてしまう。奥さんがいて子供もいて俺とこんなことをしている酷い人なのに、もっと好きになってしまう。
「でも疲れているせいか、こっちは反応がいいな」
耳元で囁きながら、ズボンに手を入れられた。前を指先で引っ掻きながら、後ろにも指を這わせてきた。
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