魔王様は俺に夢中
いつものように勇者のアモルに呼び出された魔王。一目ぼれした勇者に逆らうことも出来ず、今夜も見張りの目をかいくぐり、必死に城を抜け出してアモルに会いに出かけるが、今夜はアモルに思いがけないお願いを吹っ掛けられる。
人間界と魔界が共存する世界で、人間は魔物におびえる生活を課せられていた。しかし、一部の者には魔物と戦う力が生まれながらに備わっていた。それが”勇者”という存在であった。
「…アモル…我を脅し、人間界に呼びつけるとはどういう神経をしている…」
「別にいいんだぜ、天下の魔王様がたかが勇者の呼びつけなんか無視しても」
「くっ…」
俺は天下の魔王が、俺に一目ぼれして逆らえないことを知っている。それを利用して、俺は毎晩、魔王に会いに来るように命令しているのだ。
最初は俺も1000年以上生きている魔王なんざ興味がなかったけど、年のわりに美しい顔や肌をしているから気に入ってしまった。
「今回は、どうやって城から抜け出してきたんだ?魔王様?」
「大変だったんだぞ?我は飛行が出来ない故、魔法に頼るしかない。しかし、魔族僧侶たちが我の脱走に感付き城に結界を張ったのだ!」
うるうるとした目で俺を見つめながら話す魔王の姿がかなり可愛い。しかし、それを知られてしまうと魔王をいい気にしてしまうからな…。悟られないように相づちを打たなければ…
「僧侶さんたちやるね!魔王様、俺の命令で毎日脱走するから手を焼いていたんだろうね。魔王様ったらやんちゃだね」
「笑いごとではない!それに、見張りも増員されていたので脱出は困難であったのだぞ!」
「んで、どうやって脱走したの?教えてよ?」
「古典的な方法を取って脱走したのだ。柱に隠れ、天井を伝い、門番を買収して外に出たのだぞ!これが知れたら、我のお小遣いが減らされるやもしれぬ…」
魔王よ…お小遣い制なのか…以前になにか問題でも起こしたのか?
「それに、天井を伝っている最中に兵士の前に落ちかけたことさえあるのだぞ!そこまでして我はおぬしに会いに来てやったのだ。ありがたく思え!」
「だから、断ってもいいっていってるだろ?ここに来たのは魔王様の意志なんじゃねぇのか?」
俺がそういうと、魔王は黙ってうつむき、肩をフルフルと震わせている。
「おぬし…よくも…」
「だけど、そこまでして俺に会いたかったっていうことだろ?魔王様?」
魔王ははっとした顔で俺の顔を見た。そこには、今にもこぼれそうな涙が目にあふれている。肩を震わせていたのは怒りではなく悲しみをこらえていたのだとわかった。
「ちがっ…そんなことはっ…!我はそなたが脅すから仕方がなく…」
「可愛いのな?魔王様」
俺は我慢できず、魔王に口づけをした。魔王は顔を赤らめ下を向く。俺より何倍も色々な経験をしているであろう魔王が、このような反応をしているのを見るのも俺は好きなのだ。
「…我をからかうな…アモル…」
「からかってないさ。魔王様は可愛いよ…」
俺は、さっきより深く魔王に口づけをする。少し冷たい魔王の舌は、ほてった俺の舌には気持ちいい温度だ。
「んっ…ふっ…っつっ…」
チュパチュパと卑猥な音だけが俺の部屋に響く。魔王は、俺の口づけに夢中になり、膝の力が抜けてきた。俺はそれを支え、ゆっくりとベッドの上に魔王を寝かせる。
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