イケないふたり (Page 2)

何も言い出せないまま兄ちゃんの表情を見ていると、ゆっくりと襟元を引き寄せられる。
近づいてきた唇と唇が重なって、

「…んん…っ」

柔らかい唇の感触に、鼓動が速くなるのがわかった。
兄なのに、男同士なのに。おかしいとわかっているのに、ドキドキしている自分がいる。

「…兄ちゃん、なんで」

「ずっと好きだった、お前のこと」

舌先でぺろりと耳の辺りを舐められて、身震いする。
くちゅくちゅという水音が耳元で響いて、気持ちとは裏腹に体の奥がうずいてくる。

「…ちょ、兄ちゃん…っ」

「かわいい、雄大」

耳たぶを甘噛みされて、びくびくと体が跳ねる。
薄く開いた目から見えた兄ちゃんの表情は、今までに見たことないようななまめかしいものだった。

首筋に噛みつかれ、鎖骨の辺りまで舌先が滑らされる。
ああ、兄弟なのに。そんなことを思いながらも抗えないのは、その感触が気持ちいいからだろうか。
いや、それとも。

頭の中は妙に冷静なのに、体はすっかり反応してしまっている。
兄ちゃんが触るところが、全部熱い。
指先が俺の胸板を滑って、股間の辺りまで這っていく。
ズボンの上から俺のモノをそっと握られて、思わず吐息が漏れた。

「…雄大も、シたかった？」

「ちがう…っ、けど！」

「けど、なあに？」

スウェットの中に、兄ちゃんの手が入ってくる。下着の上から触っていたのもつかの間。
あっという間に下着の中までやわらかい手のひらが侵入してきて、俺のモノをとらえた。

「…おっきくて、硬いね」

「ちょ…っ、マジ？本気？！」

「…冗談で、こんなことせんでしょ」

ぱちりと目が合う。その表情を見て、兄ちゃんがどれだけ本気なのか悟った。
覚悟を決めたような、そんな目つきで俺のほうをじっと見ている。

「…雄大も、覚悟決めてや」

そう言って、兄ちゃんが俺のスウェットと下着をひざ下までずり下げていく。
俺の眼前にひざまずいて、俺の両脚の間に座り込む。
ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえて、その瞬間俺のモノが兄ちゃんの口の中に含まれた。

「…んん…ふぅ」

吐息を漏らしながら、兄ちゃんが頭を揺らす。
そのたびに、やわらかい舌が俺のモノに絡みつくように這わされていく。
体の中心に熱が集まるのを感じて、思わず小さく声が漏れた。

「…気持ちいいんだ、雄大」

「うるさい…っ！」

時折聞こえる粘着質な水音に、耳からも犯されてしまいそう。
ふと目に入った自身はもう最大まで膨張しきっていて、限界が近い。

「…っ、やば…っ出そう…っ」

「…ん、いーよ」

そう言った兄ちゃんが、そのまま自身の先端を強く吸い上げた。
じゅるじゅるという音が響いた瞬間、耐え切れなくなった俺は兄ちゃんの口内に欲望を吐き出した。

ごくり、という音が聞こえて、兄ちゃんがすべてを飲み込んだのだとわかった。
飲まんでいいし、と小さくつぶやくと、兄ちゃんがこっちを見て微笑む。

「…いいっしょ、最初で最後だし。もったいないから」

恥ずかしそうな、寂しそうな、そんな表情。
嫌だったはずなのに、こんなことおかしいって、さっきまで思っていたはずなのに。
思わず、兄ちゃんの体を抱きしめてしまった。

「…兄ちゃん」

「雄大…っ」

表情は見えないけれど、少しだけ声が震えているような気がした。
最後だなんて、言うなよ。これからも、ずっと一緒なのに。
一人で勝手に罪を背負って、一人で勝手に出ていくなんて、許さない。

「…一人で逃げるなんて、ずるいっしょ」

「え…っ？」

堕ちるなら、二人で一緒に。
罪を犯すなら、二人で一緒に。

「一人だけ楽になるなんて、許さんから」