ミソジのヨルキミヲ… (Page 4)
タイチの質問にトモキが明らかに困惑しているのがわかった。だからあえてタイチはトモキから目を逸らさず、真っ直ぐに彼を見て聞いた。
嘘はつけないと悟ったのだろう。トモキはキュゥと下唇を噛み締めてから絞りだすような声で答える。
「…ずっと、ではないけど。でも、彼氏ができても上手くいかなくてすぐ別れたり、セフレ関係だった相手もいた、けど、今はそんな相手も…」
「…そっか。あのさ、トモキ。オレね、トモキとセックスしたあの夜から、誰ともセックスできなくなったんだよね」
「え…」
トモキの顔が強張った。タイチは、フハ、と自嘲気味に笑って、続ける。
「勃たねぇの。1人でスルときは普通に問題ないけど、セックスになると機能しなくなるんだよオレのムスコ。あれから何人か、付き合った子もいたけど、誰ともセックスできなかった。もう今は彼女作るのも諦めてる」
「俺の…せいだね」
「まあ…それは否定しないよ」
「本当に、ゴメン。タイチのトラウマになるような思いさせて、最低だな俺」
そう言ったあと、なにかを考えていたらしいトモキは、スマホを取り出した。
「その…タイチの10年が取り戻せるわけではないだろうけど、俺にできることあったら償うよ。そういう…機能改善するクリニックとかもあるから、通うなら全額俺が医療費払うし」
「は?いや、なに言ってんのお前」
「あと…なんだ、風俗とか?行くなら、それも俺に出させて。って、俺、ドイツだしなかなか日本に帰ってこないけど、連絡くれたらお金は振り込むから。とりあえず俺の連絡先教えるから、なにかあったら――」
必死で話す、トモキの手からタイチはスマホを取りあげた。傷がつくほど力任せではないけれど、テーブルの上に投げるようにしてスマホは置かれた。
驚いたように目を見開くトモキの肩をグイッと掴むと、タイチは彼の身体を乱暴に床に押し倒した。
ゴンッと鈍い音が室内に響く。
「慰謝料払えとか、そういうこと言いたかったわけじゃねぇよ」
「タイチ…?」
トモキの上に覆いかぶさって、タイチはゴクリと喉を鳴らした。
「手、かして」
タイチが言って、トモキはこわごわと片手をさしだした。掴んだ手をタイチはそのまま自分の下半身へと誘導する。
ピタリ、と触れさせた場所、スーツのズボンの上からでもハッキリとわかるくらい、タイチの自身が大きく存在を主張していた。
「えっ…」
蚊の鳴くような声をこぼすトモキに対して、タイチはその熱量を思い知らせるように、彼の手の平にグイグイと下半身を押しつける。
「さっき、1人でスルときは問題ないって言ったけど、本当はAV観ても勃たないんだ。ただ、あの日のこと…トモキのこと思い浮かべたら、こうなんの。だからずっと、トモキのことオカズにしてた」
「タ…イチ」
一瞬、ピクリとトモキの指が動いた。それはまるで、今、触れさせられているモノをどう扱うべきか、悩んでいるようでもあった。タイチは、トモキの手を掴んだまま上下に動かす。
「なぁトモキ。オレに悪いと思ってんなら、償いたいと思ってんなら…」
タイチはもう片方の手で、トモキのネクタイをシュルリとほどいた。
「もっかい、ヤラせて」
10年前、トモキから強引に奪われた唇を、今度はタイチのほうから無理やり奪っていた。
「…ま、待って、タイチ」
スーツのジャケットはそのままに、トモキのワイシャツのボタンをプチプチと外していたタイチを、焦った声が制してくる。
「…なに」
「ほんとにスルの?俺、なにも用意してないよ?」
トモキの言葉にタイチは自分のスーツの尻ポケットから避妊具を1つ取り出して、見せびらかすように、トモキの目前にチラつかせるのだった。
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