密事を見た部屋で超えてしまった禁断の一線 (Page 5)
「あぁっ…圭吾っ」
気持ちよくて頭がどうにかなりそうだ。
呼気が混じる色っぽく掠れた声も。
軽微な摩擦や気紛れなうねりや締め付けも。
触れ合っている火照ってしっとり汗が浮かぶ肌も。
畳の匂いに混じって、目の前の男から漂う言葉で表現できない甘美な香りも。
全部が感覚神経をビンビン刺激し、オレの五感を独占した。
それこそ、今まで味わった快感や興奮がかすむくらいに。
「っ…!」
兄さんの絡む力が強くなった。
その力はさっきまでの、不意打ちや瞬間的という表現で片付けられる強度とか長さじゃない。
限界まで溜まっている精液を一滴残らずしぼり出すような勢いだった。
アンタはオレの心も情欲も一瞬で独り占めしたのに。
あの男よりも濃い存在感を残して、オレもアンタの身も心も支配して独り占めしたいのに。
今のオレに生殺し状態を楽しむ余裕や理性はなかった。
(せめてもの痕跡は刻んでやるっ)
突き上げるリズムを維持したまま、兄さんの両脚の間でぶらぶら揺れ動く部分を握って上下に擦った。
血管が浮き出ているであろう、薄い皮膚を引っ張るよう勢いをつけて。
「あっ、あっ…ダメっ、だっ…圭吾っ」
唇から漏れる声は掠れてきているが色気や甘さは濃密になっていた。
収縮しながらも熱くトロトロの内壁、硬く膨張しながらもグズグズの肉棒。
兄さんの限界も目前まで迫っているのは明白だった。
「ひっ、あぁぁっ…!」
妖艶な喘ぎや官能的な質感という雑念に邪魔されながらも、手と下腹部を無心に動かし続けて少し経った時だった。
一瞬だけオレの手中でドクンと陰茎が膨張すると、ねっとり感と生暖かさが指や手の甲に張り付いた。
その動作に同調するよう兄さんの全身からも力が抜け、急に密着感もなくなった。
風前の灯火だった理性や集中力で予想外の緩急に対応できるはずもなく、オレは挿入物を抜かないまま溜め込んだ欲をビュクッと放った。
「はぁっ…っ」
乱れた息を整えながら埋め込んだ肉を抜き出した。
半透明のねっとりした液体を拭わないまま、兄さんの体から手を離した。
もっと快感を貪りたかったという喪失感。
兄弟という関係より浅ましい欲望を優先した罪悪感。
それらは思考が正常になるのを待たずオレに重く圧しかかる。
「…ゴメンなさい」
それらを忘れるように、オレはこの場から走り去って家からも飛び出した。
Fin.
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