欲望が満たされる日を望んで (Page 3)
(オメガ性の男の入口は女みたいに濡れると聞いてはいたが)
引き締まった双丘の割れ目からは、すでにポタポタと液体が零れ出していた。
「本当に濡れるんだ…」
浮世から遠い光景に、大翔は興奮を言葉にした。
「仕事熱心で真面目なアンタも…オメガの発情期には敵わないんだな」
世間話でもする口ぶりで言いながら、大翔は液体が滴る部分へ指を突き入れた。
「ひぁぁっ…!」
薄く開いた唇の隙間から、熱くかすれた声が漏れ出る。
しかし、大翔の鼓膜を振動させるそれは酷く甲高く、甘美で絶頂をも予感させた。
清太を射精に導いたのは何度目か知れない。
しかし、発情期で底なしの欲を持つ体は、それだけで満足しなかった。
より強い快楽を求めて異物を中に受け入れては、気紛れに締め付け絡む。
20数年生きてきた中でベータ女性と経験は何度かしている大翔。
それでも今以上の密着は初体験だった。
(入れたらかなり締め付けるんだろうな)
挿入後の感触を想像しながら、奥へ指を進めていく。
「ひっ…あっ…あぁっ」
関節の凹凸や短く硬い爪に内部を擦る何気ない刺激も、清太の体は敏感に感じ取った。
「何で発情期なのに、いつもみたいに休まなかったんだ」
「はぁっ…仕事をっ、片付け切れなかったんだっ…うぁっ」
「仕事熱心なことで」
「あっ…はっ」
大翔が生み出す摩擦が抵抗力を奪っているのか、清太の体から徐々に力が抜けていく。
先輩だが年下のクセに生意気な口の聞き方。
小学校の学級委員のようにしっかりしていてお堅いタイプ。
色事とは縁遠そうな男が、口が聞けない動物のように本能を剥き出している。
(オレがこの男をここまで乱している)
好きな食べ物を好きなだけ食べる以上に。
好きなだけ眠る以上に。
好きなだけ買い物をする以上に。
生活を彩る趣味に没頭する以上に。
清太の理性を奪う行為は、掌にまで広がる熱く濡れた感触と共に、大翔へ背徳的な快楽を与えた。
その時、大翔はふと理解した。
(だから、両親はオレにぜいたくな暮らしをさせたのか)
オメガフェロモンに惑わされ、本能のまま行為に走ればオメガの一生を背負うかもしれない。
ぜいたくな暮らしは、アルファの本能を目覚めさせないためだったかも知れない。
だが、1度目覚めた本能はもう眠らないだろう。
少なくとも、発情期で苦しむ目の前の男の苦悩を拭うまでは。
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