それに名前をつけるなら、最愛。 (Page 4)
思えば、初めて見た瞬間からリクを特別に感じていた。
まだ10歳の子供だったカイにはその特別がどういう意味かなんてわかっていなかった。
物心ついた頃から片親で、父と2人だけだった生活に新しく加わった弟と母。
両親がいて、兄弟がいる。それが嬉しくて、そこに潜む自分の感情なんて、目もくれなかったのだ。
その気持ちを自覚したのは中学生になった頃で。どうやらリクも自分と同じ気持ちを抱いているのではと悟ったのは高校生の頃だった。
気づきながらずっと目をそらして、兄弟であり続けた。
それが今、兄と弟ではなくて、男と男として、SEXをするために触れ合っているのだ。
これまでに、リクを抱きたいという欲望にかられて自分で慰めたことは数え切れないけど、現実のそれは想像の何万倍も上で。
「脱がしていい?パンツ」
「いや…自分で脱げるから、その…手、一旦離してよ」
もどかしそうに膝頭をすりあわせながら、リクは片手を下に伸ばして、下着を触っているカイの手をどけようと押してきた。
そのリクの手を、カイはパシッと掴む。
余裕そうにふるまうのなんてもう限界だった。
手を離してしまったら、リクは目の前から消えてしまうんじゃないかと、ありえない不安を抱いてしまうくらいには、余裕が無かったのだ。
「嫌。離さない」
「ちょ…離してっ」
「リクのこと、離したくないんだよ」
ついさっき、他の女性と“結婚する”と告げた口でよくも…と、カイは自分の発言にあきれたが、今ここにいる間だけはせめて…と願うのだった。
*****
「あ…っ」
なまめかしい水音が鳴る部屋の中、リクの濡れた声が響く。
今日、リクの家を訪れる前に、ドラッグストアで購入した親指1本ぐらいのサイズの使い捨てボトル。封は切られ中身の潤滑液は、リクの後孔とカイの手指にまとわれてカラになっていた。
試すようにゆっくりと、けれど確実にリクのナカに指を挿入していきながらカイは、前にあるリクの自身を口に含んだ。
「リク、舐められるの好き?」
「な…に、言ってっ…」
強く吸いあげるように咥えこむと、口内でピクピクとソレはわずかに震えて、先走った欲の味が広がった。
同性が相手というのはもちろんだけど。多分今まで、女性相手でもこんなに時間をかけて丁寧に前戯をしているのは初めてだった。
リクだからというのと、この時間が終わってほしくないというひそやかな願望と。
はなから、今日こうなるつもりだったわけではない。潤滑液まで購入していたものの、使うことなく終わってもそれはそれでいいと思っていたのだ。
ただ、これまでリクに抱いていた兄弟愛とか家族愛では言い表せないぐらいの深い気持ちを伝えられたらと。
結婚前の身分でいながら身勝手に感情を伝えることが許される環境が欲しかっただけで。
けれど、見てしまったから。
涙をこぼして感情をあらわにするリクを見てしまったから。
心も身体も止まらなくなった。
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