猫になった少年
昔から仲良しの幼馴染み、洋と蓮。二人の生活は、いたって平凡なものだった。しかしある日、蓮が目を覚ますと、頭から猫の耳が生えていて…!洋は蓮を人間に戻すために調べつくし、ネットで「とある方法」を見つける。果たして洋は蓮を救うことができるのか?
口から先に生まれたと言われ続けて、20年。
そんな俺が、本当の意味で“言葉を失う”ほどのことに出会うなんて、思ってもみなかった。
「…洋、どうしよ…」
「…え…?」
目の前にいるのは、幼馴染みの蓮。
見た目は、いつも通りの蓮だ。頭から猫耳と長い尻尾が生えていることを除いて、だが。
「俺、このまま家の外に出られないのかな…家族にも言えずに…このまま死ぬんだ…」
「いやいやいや、ちょっと待て。何も死ぬことはないだろ」
「だってこんな男キモすぎるでしょ!!外に出たら変態扱いだよ!」
目に涙を浮かべる蓮。
いや、大真面目なんだろうけれど。あり得ないシチュエーションすぎて、なんだか現実味がない。
「…蓮、とりあえずさ…どうにかして、元に戻ろうよ」
「元に…?」
「なんか俺、テレビで同じような人見たことあんだよ。だからきっと、元に戻る方法もあるんじゃないかって」
「…マジ…?それ、信じていいわけ?」
疑いの目を向ける蓮。だけど、曖昧な返事をすれば、蓮をさらに落胆させてしまうことになると思った。
正直なところ、直す方法があるかどうかは俺にもわからなかった。
でも、俺はなぜか「直してやる」という自信があった。その自信はどこからくるものなのか、自分自身でもわからなかったけれど。
「大丈夫、俺の言うとおりにしてたら直るから!」
気づけばそう、大見得を切ってしまっていたのだった。
*****
「…で、どうしたらいいの、俺」
「まぁとりあえず落ち着いて。そんで、俺はネットで調べてみるから」
「ネット頼みかよ!」
とりあえずそれしか方法がない。
外に蓮を連れていくのは危険だし、まずはこの家から出さないようにしないといけない。
俺はスマホを開いて、「猫になったら 直す方法」と打ち込む。
こんなんで出てくるわけないってわかってるけど、なんでもやってみないことには始まらない。
画面をスクロールして、それっぽいものを探す。探す、探す、探す…
探せども探せども、それらしいものはひとつも上がってこない。
検索ワードを変えたりするけれど、まったくヒットしない。
一緒に画面を覗き込んでいた蓮の表情も、少しずつ曇っていく。
「…洋…もう無理なんじゃないのこれ…」
「諦めんなよな、まだまだ始めたばっかりだろ」
そうは言ってみるものの、調べ始めてもう5時間。
気づけば、もうあたりは暗くなっていた。
「…ちょっと、休憩でもするか…」
「うん…さすがの俺も目が痛いわ」
大きく背伸びをして、蓮のベッドに倒れ込む。
その瞬間、俺の手に柔らかい感触。
「ひゃ…っ!」
「え…?」
蓮の甘い声が、部屋中に響く。待って、もしかして今のって。エッチな漫画でよく見るアレなのでは。
「…蓮、もしかしてお前」
「なんだよ…」
「尻尾、感じちゃうわけ…?」
「…っ!!」
蓮の顔が一気に紅潮して、ふわふわな耳が恥ずかしそうに垂れる。
尻尾は相変わらず、ゆらゆらと二人の間で上機嫌そうに揺れていた。
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