×××しないと出られない部屋 (Page 2)
そして気づいたときには、俺は真っ白なベッドの上にいた。
俺の隣には、木村。
「…ちょっと、起きてください!」
「…ん…?」
「ここ、どこなんですか!」
まだ寝ぼけている木村に聞くことを諦めて、俺は部屋中を見渡す。
グレーの壁で囲まれた無機質な部屋には出口が一つだけあった。
窓はなく、今が何時かもわからなければ、荷物がどこにあるかもわからない。
「なんだこれ…」
急いで部屋を出ようと起き上がる。
出口のドアを開けようとするも、そこは外からカギがかかっていて出ることができない。
ドアの内側には、小さな張り紙。
そこにはこう書かれていた。
“この部屋に入った者は、セックスするまで外へ出ることは出来ない”
そして俺は、再び絶望の淵に立たされたのであった。
*****
「どうしようって悩んだって、ヤるしかないだろ」
「嫌です、あんたとするなんて」
「…そんなに嫌われてんの俺」
あれから何時間が経っただろう。
ドアを蹴り上げたり、壁を叩いてみたり、大声で助けを求めたりしたけど、どれも効果はなかった。
それどころか体力はどんどん消耗していくばかりで、俺はもうすっかり疲れ切っていた。
「…なんでこんな部屋に」
「考えたって無駄だろ、とりあえずヤんないと話が進まねーし」
「…あのねぇ…なんでそんなに前向きなんですか」
ため息交じりにそう尋ねたら、木村はなぜか笑った。
悔しいけど、女の子に人気だけあって、本当にきれいな顔立ちをしている。
肌もきれいで、唇だってやわらかそう。指だって細くて、長くてきれい。
「…なーに、そんなに見られたら穴開くんだけど」
そう言われて、はっとした。
思わず見とれてしまっていた自分が、なんだか恥ずかしい。
木村が俺の方に体を寄せてくる。
いつの間にか手のひらが重なっていて、ぎゅっと手の甲をつかまれた。
「…ちょっ…」
甘い匂いが、ふわりと香る。
少しだけ混じったタバコの匂いが、妙に心地いい。
そのまま腕を引かれて、俺はベッドの上に組み敷かれた。
大嫌いな相手なのに、なぜか抵抗することができない。
「あのさ、俺のこと嫌い?」
「き、嫌いです」
耳元で尋ねられて、鼓動が一気に速くなる気がした。
嫌いだ、こんな自分勝手な男。いつもいつも、俺に迷惑ばかりかけて、へらへらして。
嫌い、嫌いなはずなのに。
「…俺は、高橋のこと、けっこう気に入ってんだよね」
「は…?」
「だからさ、」
二人の距離がゆっくりと縮まっていく。
唇が触れてしまいそうなほどの距離。逃げることも、抵抗することもできない。
「俺と、セックスしようよ」
悪魔のささやきが、聞こえたような気がした。
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