炭酸ジュースとお酒 (Page 2)
成人したら酒もグイグイ飲めるようになるかと思ってたけど、21歳になって飲み会なんかも何度か経験してきたものの、どうも俺はあまり酒には強くないらしい。
それはカズシも同じで。だからそろってアルコールの少ないジュースみたいな酒。多分ちょっと大人を意識したいのだ。俺もカズシも。
そういえば小学生の頃もカッコつけたくて、薬みたいな独特の味がする炭酸ジュースを2人してわざわざ飲んでいた。結局中学生になった頃には全く買わなくなったっけ。
カズシとの付き合いも長いな…と、過去を思い返していて、ようやくさっきのカズシの質問を思い出す。
何か言ってほしそうなカズシを見て、俺はコホンとせき払いをした。
「そりゃお前…嫌いなやつとずっと仲よくはせーへんやろ。大学別々になってもこうやって会うてんのに」
「いや、そういう意味ちゃう。トーマ、オレに恋してるんちゃう?て話」
そんなに強く握っていたつもりはなかったが、缶チューハイがペコと間の抜けた音をたてた。
「こい…って池にいる鯉の話じゃなくて?」
「なんでやねん。ラブの恋や。真面目な話、これまでのトーマの言動考えてたら間違いない気がするねん」
「俺の言動?すまん、まったくそんな覚えないんやけど?」
そう俺が返せば、カズシは自信たっぷりな表情でハッキリと言ってきた。
「まずお前、今まで彼女いたことないやん」
「はぁ!?非モテを馬鹿にしてるんか!」
「ちゃうって!小5でトーマと仲よくなってから今まで、好きな女の子の話とかしてきたことないやん」
「やからそれがなんで、カズシに恋してることになるん。発想が飛躍しすぎやろ」
普通に生きてきて誰からも告白されず、とくに親しい女子がいない男なんてゴマンといる。モテ街道を走ってきたカズシには理解できないだろうけど。
あきれ顔の俺を気にもとめず、カズシは熱く語りだす。
「で、トーマは今までオレに彼女できたら絶対反対してたやん。性格悪そうとか男好きそうとか…色んな理由つけて。それってさ、トーマが俺のこと好きやから、オレが付き合う女の子はみんな嫌な子に見えるんとちゃうかなって。トーマにとっては恋のライバルなわけやん?」
ガサガサと袋を探ってカズシが取り出したのは、コンソメ味のポテトチップス。小学校のときからずっと好きなやつだ。
「トーマに彼女のこと悪く言われたら、オレもその子のこと悪く見えてきて毎回長続きしーひんけど、じゃあトーマはどういう女の子と付き合うんやろ?ってずっと気になってたんよ。せやのにお前、大学入ってからもまったく彼女できひんやん。もしかしたらトーマは男が好きなんちゃうか?て最近考えててさ」
「いやだから、なんでそこから急に俺の恋愛対象が男って話になるん…」
「実はな、ちょっと前にオレ、同じ大学の子に告白されてん」
「へぇ。大学ではあんまり告白してくる子おらんって言うてたのに」
「相手、男や」
「へ…」
予想外の言葉に胸がイヤにざわついた。
「学部も同じで、たまに遊んだりもしてる奴やったからビックリしたけど…すごい勇気だして告白してくれたんやなって思ったら、ちょっと嬉しかった」
「嬉しかった…って、え、あぁ、なに?今回は彼女じゃなくて彼氏ができましたってオチ?」
どんな男やねん、とまで言いかけて言葉を飲んだ。
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