ぼくのつがいになってよ (Page 2)

黒の革張りのソファーに、体を押し付けられる。
膝の上に乗られ、身動きを取ることができない。

「…なにすんだよ…っ」
「嫌だなぁ、こんなのスキンシップじゃん。昔よくやってくれたでしょ?」

幼かったころの記憶がよみがえる。
あの頃の自分がどれほど愚かだったか、今になって思い知らされるだなんて。

「やめろよ…っ、もう何年も前のことだろ!」
「何年経ったって、俺は覚えてるよ?だから、立花くんの顔だって忘れてなかったでしょ」
「ふざけんな…っ!」

ネクタイをほどかれ、両手首をキツく縛られていく。
昔は俺のほうが力が強かったのに、今では必死に抵抗してもかなわないほどだ。

シャツの前を開かれ、胸板を露わにさせられる。
矢吹のしなやかな指先が俺の胸の突起をこねるように刺激していく。

「…ひぃ…っ…」
「痛くないでしょ?気持ちいいよね?」

自分の思いとは裏腹に、体は反応を示してしまう。
気持ちよくないはずなのに、どうして。

そう思った瞬間、体中を電流が走るような刺激が駆け巡った。

「…っ…はぁ…あ…っ?!」
「やっぱり…思った通りだ」

感じたことのない快感に全身が震える。
息は今までにないくらいに荒くなって、体中が火照る。
考えたくない、考えたくなかったけれど。これは、もしかして。

「…立花くんさ、オメガだよね」
「ひ…っ…あぁ…!」

これがヒートだと、ようやく自覚した。
小さいころから一度も欠かさず抑制剤を飲んできたおかげで、人前でこんな姿をさらすことなど一度もなかった。
それなのに、なぜこんなときに限って。

床に放り投げられたカバンに手を伸ばそうとするけれど、矢吹がそれを許さない。
抑制剤を飲んでしまえば、こんなの簡単に抵抗できるはずなのに。

「ちが…う…ッ…オメガなんかじゃ…っ…」
「悪いけど、俺にはわかるんだよね…だって俺」

耳元で、ささやかれる。
その瞬間、自分の中の何がが音をたてて崩れ落ちる気がした。

“俺…アルファだからさ”

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