巡る想いと快感と (Page 2)
すぐに到着したタクシーにツツミと乗り込み、彼の家へと行先を告げる。
外の喧騒(けんそう)が嘘みたいに静かな車内、ツツミは僕の肩にゴテンと頭を預けてきた。
癖のある猫っ毛が、僕の頬をチクチクとくすぐった。その感覚に、忘れようとしていた記憶がよみがえってくる。
僕とツツミは共に、同期入社の27歳。そして、つい半年程前まで、セフレだった。
きっかけは、そうだ。今日のような飲み会の夜だ。終電を逃してしまって、僕とツツミは深夜のタクシー代より安くつくからと、2人でラブホテルに泊まったのだ。
そのままホテルで、流されるままにツツミに抱かれた。
男同士のセックスなんて経験したこともなかったけれど、ツツミに抱かれるのはひどく気持ちよかったんだ。
それからは時間が合えば、体を重ねる関係になっていった。
ツツミにとっては、愛の言葉や誓いの必要がない、セックスだけの繋がりがよかったのかもしれない。
3年続いたその関係を、突然やめようと言ってきたのもツツミだった。
「もうやめよか。よくないやろこんなん。お互いに」
恋人でもなかった僕とツツミの関係は、その言葉であっさりと解消されたのだ。
それからはただの同期、同僚として必要最低限の会話をするだけになり、こんな風に2人きりになるのは初めてだった。
肩に乗る、ツツミの頭に頬をよせたくなる衝動をグッとこらえて、僕はトンと肩を揺らした。
「ツツミ、もうすぐ着くから。体ちゃんと起こして」
「運んで」
「へ?」
「やから、カワタが部屋まで運んで」
当然のように言われてしまったら、返す言葉が見つからない。
いや、これは僕の性分か。
ツツミに言われたら、求められたら、僕はそのとおりにしてしまう。
3年の間で、しっかりと体に染み付いてしまった、性分だ。
*****
結局、ツツミに言われるままに僕は、彼に肩を貸して一緒にタクシーを降り、部屋まで運んだ。
マンションの部屋番号も、鞄のフロントポケットに鍵が入ってることも、聞かずともわかった。
部屋に入り、玄関のあがりにドサッとツツミを降ろした。
「あとは自分でして。それじゃ…」
言って、踵(きびす)を返して帰ろうと思った、そのときだった。
つい今までグデングデンだったのが嘘みたいな機敏な動きで、ツツミは起き上がり僕の腕を乱暴にグイと引っ張ってきた。
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