初対面のアルファと発情期の末に結んだ疑似的な番の契約
オメガでありながらベータとしての生活を送る葵(あおい)。そんな中、恋人の幸成(ゆきなり)に隠れて通う、アルファが集まる飲み屋で猛(たける)と出会ってそのまま夜を共にする。しかし2人の欲望が収まる前に、避妊具が切れてしまう。買いに行くと言って行為を中断しようとする猛に、葵はあることを言う…。
友人を偽り。
職場の同僚や上司を偽り。
挙句には恋人も偽り。
オメガの性別も欲望も偽ったベータとしての日常生活。
それは大多数を占める性別の中に溶け込んで身を守るための手段だった。
しかし抑制剤を駆使して、理性をフル稼働させてもアルファを欲する本能は抑えられなかった。
定期的な発情期が訪れてベータの恋人との時間を後回しにして、いつもの飲み屋でアルファの相手を捜し求めていた時だ。
猛と名乗る、1人のアルファが僕の元に寄ってきて話しかけてきた。
どんな会話をしてどんな流れで出てきたか忘れたが、彼は僕に言った。
「性別と欲望を偽るのって生きにくい」
ほどよくお酒が入ったほろ酔い状態な上に発情期で、警戒心が緩んでいたからか。
その言葉は僕の心に矢の如く強く突き刺さった。
*****
記憶が曖昧だ。
発情期が迫って、恋人の幸成くんに“仕事で1週間くらい会えない”と連絡を断って。
火照ってどうしようもない体のままいつもの店に足を運んで。
いつものようにお酒を飲みながらアルファの相手を捜し求めて。
それで…
「…っ!」
その先を振り返ろうとしたところで、目を見開いて意識を完全に覚醒させた。
その時、むせ返るような濃い精液の匂いが嗅覚を刺激した。
(そうだ、ほろ酔いになったところで相手が見付かって、そのままお持ち帰りされたんだ…)
現状までの経緯を漠然ながらも思い出し、体を起こそうと軽く身じろいだ時だった。
「ひぃっ…!」
肌が布に擦れると全身が熱を持って再び、うずき始めた。
(まだ、まだ足りない…ヤりたい、ヤられて突っ込まれて出されたい)
連鎖のように沸き出す高揚を少しでも紛らしたくて、僕は下半身の局部へ手を伸ばした。
行為を終えたにも関わらず、そこの肉塊は未だ硬度と高い体温を持って生気を保っていた。
それらに操られるように、僕は握ったままの掌を皮を剝くようシュッシュッと上下に動かした。
深く意識することなく摩擦を起こし続けるとまだ限界ではなかったのか、熱と硬さに比例して欲求も急激に増幅した。
欲を生み出して欲を抑えようという思考が浅はかだったと、残る理性の中で後悔した。
(何か、何か…)
本能を抑える術を模索しながら寝返りを打つと、シーツとは違う物が肌を擦った。
表面はしっとり濡れていてハリや弾力があって…
感触の正体は人肌で、その相手が誰のなのか理解するまで時間もかからなかった。
――相手は今日知り合ったアルファの猛さん。
それを思い出せば、やることは決まっていた。
薄暗い中、感触を頼りに猛さんの肌に掌を滑らせる。
やがて自分の局部にもぶら下がる柔らかな肉塊を認識すると、そこへ唇を寄せてそのまま口内に含んだ。
口淫と手淫を同時にするなんて異様な光景だと思うが、ここまで来たら止められなかった。
アメ玉を味わうように舌全体で唾液を絡ませれば、ふにゃんと萎えていた肉がムクムクと硬く膨張する。
そして最終的には、唇と舌だけでは扱えない大きさにまで成長を遂げた。
「んっ…」
膨張しきっても陰茎を舐め回していると、遠くで掠れた低い声が聞こえる。
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