初対面のアルファと発情期の末に結んだ疑似的な番の契約 (Page 4)

「…じゃあ、このまましよっか」

その応えは意外とあっさり返ってきた。

あまりの呆気なさに意表を突かれながらも、安堵と高揚感が心身を満たすがそれも長くは続かなかった。

「だけどオレのワガママも聞いてよ」

「…どんなワガママでしょうか?」

どういう条件を突き付けられるのだろうか?

緊張で鼓動を乱しながらも、猛さんの応えを待った。

「オレを葵くんの特定のアルファにして」

僕の特定のアルファ、つまり…

「君の番になれ、ということでしょうか?」

言われた条件を頭の中で呟き、自分なりに理解して聞き返す。

しかし、返答は予想と違っていた。

「そういうことじゃない」

「ではどういうことですか?」

「体がうずいて仕方ないときとか。今みたいに発情期が来たときとか。あの店で相手を探すんじゃなくて、オレを呼んでってこと。無条件で飛んで行くから」

「はあ…」

「その代わり、オレが呼んだら葵くんも無条件で飛んで来て」

「…つまりは、どういうことですか?」

「セックスフレンドになろう、って言えばわかる?」

セックスフレンド、セックスをするためだけの関係。

長々した望みを一言で要約され、すぐに理解した。

それと同時に、今日まで幸成くんに隠れてしてきた行為の正当性を一瞬で打ち砕かれた気もした。

心が罪悪感に染まる僕を尻目に、猛さんは畳み掛けるように言った。

「葵くんの、ベータとしての生活は壊さないから。オメガの本能、全部オレに受け止めさせて?」

今まで通りベータとしての生活を送れる。

常に相性のいいアルファに欲望をぶつけられる。

確実に逃げ場を潰す、ずるくて甘い誘い文句。

しかも後にも退けないこのタイミング。

「…わかり、ました」

僕に拒否権はなかった。

「交渉成立」

不敵な笑みを含んだ声で囁かれると、グチュッとした水音が聞こえてきた。

それと同時に硬く熱い肉が、内部を割って入ってくる。

最奥を貫かれる感触に、全身が悦びで震えた。

肉壁が異物に馴染み切る前に、猛さんが勢いよく動き出す。

「あっ、はっ…あぁっ」

壁に肉が擦れる感触も、高過ぎる体温も。

「気持ちいいっ…こんなに熱くてっ、気持ちいいのっ、初めてっ…ああっ!」

薄くも分厚い、避妊具越しの体温しか知らない僕にとっては衝撃的だった。

溶けるような感覚に、思わず下半身の力を入れて中の猛さんを締め付けた。

「オレも初めてっ…こんなに、気持ちいいの」

「ずっと…ずっと、こうしていたい、です」

「嘘でもっ、この場だけの言葉でも…嬉しい」

「嘘でもっ、この場しのぎでもっ、うああっ…!」

甘美な違和感が消えると同時に、猛さんの硬い肉に壁を擦られて甲高い声を上げてしまった。

「ひあっ!」

淫靡な余韻を植え付けると、猛さんは僕の体を仰向けにしてそのまま上に跨った。

正常位の体勢で、緩みと湿りに任せて先端部から挿入していく。

しかし今度は全部を入れず、半分埋め込んだ時点で律動を再開した。

「ゴメンゴメン、嘘でもこの場しのぎでもないね」

言葉と裏腹に軽い口調で謝罪すると、おわびだとでも言うように動く力と速度を増幅させた。

腰を掴まれ、全身をガクガクと揺さぶられる突き上げ。

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