さあ、恋をはじめよう
職場の先輩と後輩が一緒にお酒を飲んだ日のお話です。ちょっとヘタレな後輩攻め、強気で男前な先輩受けが好きな方におすすめです。スーツの描写が少しだけあります。最初シリアスっぽい語り口ですが、基本的にはハッピーエンドです。
酒を飲んだ帰り道は、いつも喉が渇く。水を飲んでも、飲んでもどこか足りない気がして。なんとか潤そうと、何度も何度も、あおるように水を口に含むのだった。
「隼人さん、飲みすぎですよ」
店を出るとき、晃に掴まれた腕がまだ熱い。振り返ったときに、絡んだ視線をまだ忘れられない。
先輩と後輩。ただのそんな関係だったのが少しずつ変わっていって、今では体を重ねる関係になってしまった。
何かきっかけがあって、とかそんなんじゃない。いつの間にか、そんな風になっていた。
タクシーに乗り込んで、スマホを見た。さっき別れたばかりの晃から、メッセージが来ていた。
“やっぱり、今日も家行っていいですか?”
さっき聞いたときは、今日は行かないです、って言ったくせに。どういう心境の変化なんだろうか。
飲みすぎたせいか、思考がほとんど停止している。シラフだったら断っていたところだけど、あいにく今日は、そういう気分。晃と体を重ねたい気分なのだ。
年下の考えることはよくわからない。だけど、晃もそういう気分なら、一石二鳥だ。
そんなことを思いながら、いいよ、とメッセージを返した。
自宅に戻り、シャワーを浴びた。酒を飲んだせいか、だいぶ体が熱い。なんとか熱を冷まそうと、コップ一杯の水を飲みほしたところで、玄関のチャイムが鳴った。
「…なに」
「なに、じゃなくて。開けてください」
インターホン越しに聞こえる、晃の声。わかったよ、と呟いて玄関のドアを開けると、先ほどと変わらない様子の晃が立っていた。
「…帰るんじゃなかったの」
「や…隼人さんに言いたいことがあって」
そう言いながら、部屋に上がりこんだ晃。いつものように床に荷物を置いて、スーツのジャケットをソファーの背にかける。
「なに、言いたいことって」
「…まぁまぁ、そんなに焦らないでくださいよ」
隣に座った晃が、俺の太ももに手を這わせる。互いにシラフではないことくらいわかっている。だけど、触れられると、体温が上がってしまうのは仕方ない。
「セックス、してからでいいですか?」
「…嫌だ」
その体を突き放す前に、抱き寄せられた。酒のせいでほとんど力の入らない手のひらで押しのけようとしたけど、それすらもかなわない。
晃の唇が俺の唇に重なって、その隙間から舌先が差し込まれる。反射的にその舌先に吸い付いて、その柔らかい髪の毛を撫でてしまう。快感に抗えない自分が情けないなんて頭の片隅で思ったけれど、こればっかりは仕方ない。
「…っ、ん」
両脚の間に、晃の太ももが入ってくる。がっちりとした太ももが、股間に押し当てられて口の端から吐息が漏れた。
「…もう硬くしてんすか…?」
「…うるさ…い」
快感に弱い自分が情けない。だけど、煽られるようなことを言われ、さらに興奮が増してしまう。
視界の端で、晃がネクタイを緩める。ああ、セックスするんだ、そう思うと胸の鼓動が弾むのがひと際速くなっていく。
エロい人ですね、って耳元で言われて、びくりと肩が跳ねた。晃の手が伸びてきて、器用に俺のスラックスを脱がしていく。
「…っ、はぁ」
下着越しに自身を撫でられ、小さく声が漏れる。その輪郭を撫でるように手のひらを動かされ、中心に熱が集まっていくのがわかった。
「気持ちよくなってくださいね、隼人さん」
晃の優しい声が耳元で響いて、小さく頷いた。
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