さあ、恋をはじめよう (Page 2)
「…っ、う、ん!!」
「隼人さん…っ、力抜いて」
いつもより、晃の力が強い気がした。
俺の腕をつかむその手のひらも、耳たぶを甘噛みするその歯も、少しだけ乱暴で、なんだかドキドキする。
晃のモノが俺の中を一気に貫いて、奥のほうを刺激する。
俺の声と、晃の熱い吐息、そして二人の肌がぶつかる音だけが部屋の中に響いて、それがさらに快感を増幅させていく。
「…っ、どこにも、いかないでください、ね…」
「…は…っ…?」
晃の言葉に驚いて、目を見開いた。晃は切なげな表情を浮かべて、俺の頬をゆっくりと撫でた。
「…ずっと、俺のそばにいてくれますか」
「なに、言って…っ」
居酒屋を出るときの晃の表情と一緒。熱い視線が刺さって、思わずごくりと生唾を飲み込んだ。
「…約束、してください。どこにも行かないって」
首元に噛みつかれる。鈍い痛みが走って、少しだけ顔をしかめてしまった。
その間も、晃の腰の動きは止まることはない。むしろ、そのスピードはどんどん速くなって、俺を追い込んでいく。
「…っ、やくそく、する、するから…ぁ!」
奥のほうをえぐられるように突き上げられながら、晃が俺の自身に手をかける。内部を擦り上げられるのと同時に竿をしごかれて、もうこらえ切れない。
「っ、や、だ…!もうだめ、あきら…っ」
「…はぁ…俺も、やば…っ」
腰をつかまれて、最奥を突き上げられた。その衝撃で、俺は果ててしまった。晃のシャツに俺の白濁が飛び跳ねているのが見えて、なんだか恥ずかしくなってしまった。
「…隼人さん」
晃はそんなこともお構いなしに、俺の体をぎゅっと抱き寄せる。荒くなった息を整えながら、俺はその体に身を預けた。
「…なに、お前…なんかあったの」
情事中の男らしい姿はどこへ行ってしまったのか、晃はすっかりヘタレな後輩に後戻りしてしまっている。
まぁ、そんなギャップにハマっているのは俺なんだけど。
トントン、と晃の背中を叩きながら、あやすように名前を呼んでやると、甘えたように俺の手のひらを握ってくる。
「…隼人さん、部署変わっちゃうって、本当なんですか?」
「…は?」
まさに、寝耳に水。なんのことだ。だけど、晃の表情はいたって真剣だ。
「だって、今日隼人さん、部長と話し込んでたでしょ!…しかもめっちゃ長かったし…絶対部署異動じゃん!」
「え、いやいや…完全に誤解なんだけど…」
どうやら、晃は勤務中に俺が部長と面談していたのを見た女性社員から、俺が異動ではないかといううわさ話を聞いてしまったらしい。それを確かめるために今日飲みに誘ったら、予想通り俺はいつもより飲むペースが早く、部署異動で自棄になっているのだと思ってしまったそうだ。
「…だから、お前あんな顔してたの」
「あんな顔って…俺、どんな顔してました?」
「…捨てられた犬みたいな顔」
それを聞いて、子どものようにはにかむ晃。
ああ、可愛いな。そんな風に思ってしまう俺も、もうとっくに恋に落ちているんだろう。
順番は前後してしまったけれど、そんなことはもうどうだっていい。
今目の前にいる、君が愛しい。それだけで十分だろう。
「なぁ、キスして」
そう言うと、晃はそっと俺に口づける。今までしてきた、そんなキスよりも甘い気がする。
さあ、恋をはじめよう。俺の気が、変わらないうちに。この酔いがさめる前に。
とびっきりの恋を、はじめよう。
Fin.
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