画面越しの彼よりも (Page 2)

「そろそろその大きさじゃ物足りないんじゃない?買ってあげようか?」
画面に映った彼は、後始末をしながら声をかけてくる。
春樹はしばらくの間、ぼう然としながら彼のそんな様子を眺めていた。

定期的に、シマからはゴツゴツしたバイブだとか、透け透けの下着だとかのプレゼントがある。
大抵は、駅のロッカーの鍵を、指定の隠し場所で受け取る形でやりとりしているのだが。

「…やだ。これ以上は、腰が痛いし」
まだ男性との経験がない春樹に最初送られたのは、指先ほどの細いバイブで。
しかし、彼との付き合いが長くなる中で、今や、一般的なサイズのものが送られてくるようになった。

「ふーん、俺こんなにハルに貢いでるのに。いつになったら、本物触らせてくれるわけ?」
春樹のサイトでの呼び名であるハルと呼んでくる彼は、タバコの煙を吐きながら不満そうにそう告げる。

そんな彼の様子を見て、春樹は入っていたバイブを後ろから抜いた。

「っん…ふ。…だって。どう見たって、シマのは、コレより普通にでかいし」
デスクにそれを投げた春樹は、手すりから足を下ろして、椅子に膝を抱えて座る。

「言ったじゃん。シマ、待っててくれるって。…だから、俺だってこうして…」
「…はぁ。ハルはいつもそういうけどさ、俺が直接解すのじゃダメなの?初めての子とやったことあるけど、時間かければ普通に1日で入るって」

彼に他の男の話題を出されてムカついた春樹は、そのままパソコンの電源を切ってやる。
すぐに彼からのメッセージで携帯の通知が鳴ったものの、春樹はざっとだけ精液をタオルで拭って布団に潜った。

「馬鹿…っ」
彼とは、会いたくないわけじゃない。ただ、春樹には学生時代に無理やり回されそうになった経験があって。

今でも、満員電車やエレベーターなど、人と密着する空間は得意じゃない。
それでも…好きになった人と肌を合わせてみたいと、ずっと思っていて。

最初から優しく声をかけてくれたシマ。
彼となら、してもいいと思えたのだ。
…けれど、初めて見た時に驚いたのは、彼の一般的なサイズよりもずっと大きなそれ。

「あんなの…入るわけないじゃん…」
そう思いながらも、彼がいつだって春樹を見て、欲情しながら扱いてくれる姿に、春樹も興奮していて。

会うのは簡単だ。けれど、彼とできなかったら?
怖くなって拒んでしまったり、大きすぎて入らなかったら?

シマとの関係がそんなふうに終わってしまったら、次こそ春樹は立ち直れない気がしていた。  

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