気ままなサソリ
目を覚ませば知らない砂漠だらけの世界に飛ばされた湊。40歳間近の彼だったが、若い王族の男であるディヤに囲われ、そのまま腹に子を宿すことになる。怒涛の日々を過ごす湊だが、いつのまにかディヤにすっかり溺れており…?
湊(みなと)は幼い子を抱いていた。
色白で、普通に黒髪で黒瞳の湊とは対照的に、小麦色の肌と金色の髪色と瞳を持つその子。
…しかし、その子は湊が命がけで生んだ子である。
「ヒューイ、あんまがっつくなよ」
吸いづらいだろう湊の小さな乳首から、必死にミルクを吸っている彼。
ヒューイと名付けたのは、彼らが発音しやすそうだからなんて理由で…。
そもそも、男である湊が妊娠だとか授乳だとかおかしな話だが。
どう説明すればよいかはわからない。
ただ、湊がある日、目を覚ますとそこは日本ではなくて。
よくある異世界転生って、高校生とか若い子が、イケメンの騎士や可愛い女の子と巡り会うためにうっかり飛んだりしているが、湊はもう40間近のおっさんで。
目を覚ますと知らない砂漠地帯に、動けずにぐったりと寝転んでいた湊。体は熱中症のような症状だった。
しかし、このまま干からびて死ぬんだと思ったタイミングで、激痛が腹に走って。
そこにはサソリの姿。
湊は痛みと、恐怖でそのまま意識を失ったのだった。
「tェWkイ2f…△ヌT?」
目の前にいたのは、言葉の通じないめちゃくちゃ顔の整った男。
そんな彼に強引に抱かれ、
そうして気持ち悪い日が続いたうちに腹がデカくなっていったのだ。
それはもう、怒涛(どとう)の日々だった。
腹の膨らみが子供だと気付いたのは、それから2週間ほどしてからで。
人間だと10ヶ月あたり母親の腹にいる赤子だが、湊の腹は2週間で膨れ、そうして胎動を感じた。
まさか妊娠なんて想像もしていなかった湊は、突然、腹がデカくなっていたことに驚いたものの、あの綺麗な顔の男がやたらと嬉しそうに湊の腹に触れるわけがわかった。
彼とは言葉を交わせるわけじゃないので、うっすら聞き取れた【ディヤ】と彼のことを呼んでいる。
そんなディヤとヒューイとの日々は、本当に目まぐるしいものだった。
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