気ままなサソリ (Page 2)
「ミー、もう出ない」
そう言って、名残惜しそうに湊の乳首を吸い続けるヒューイ。
彼は妊娠してから1ヶ月ほどで、ものすごい激痛と共に、湊の膨れた腹からすり抜けるようにして出てきた不思議な子で。
1年経った今は、人間で言う3歳くらいの歳まで成長している。
そして、この世界で唯一、湊の言葉がわかる子であり、ディヤや他の人との意思疎通も、ヒューイがメキメキと成長する中で言葉を覚えて、仲介してくれるようになった。
それでわかったのは、やっぱりここは知らない世界で。
湊はよくわからないが神に選ばれた人であること。そして、あのサソリは神の使いらしく、あれに刺されたことで、湊は子供を宿せるようになったらしい。
そして、ディヤはこの世界で、いわゆる王族の人間で。
まあ、難しいことは、ただのおじさんの湊にはどうだっていい。
とりあえず、父親であるディヤと生まれてきた子であるヒューイに、日頃からめちゃめちゃ愛されて過ごしている日々は、湊にとって元の世界で社畜として暮らしているよりは、ずっと幸せな時間だった。
*****
その日もニコニコと帰ってきたディヤは、ヒューイを抱き、嬉しそうな顔をする。
「ディヤ、おかえり」
それから、彼は湊の頬に軽くキスをして。
ヒューイをベビーベッドに置くと、次にめちゃくちゃ濃厚なキスをしてくれる。
湊にとっては今でも恥ずかしいやりとりだが、彼に愛されることは嫌いじゃない。
それから、湊を抱きしめるディヤと、逃げ出せないようサークルがつけられたベビーベッドに入れられたヒューイが何やら言い合いをしている。
そんな光景も今は見慣れたもので。
「ミー!またこいつと寝るの!?別に毎日、しなくてもいいじゃん!…いっつもディヤとばっかり夜寝てさ。俺だって、湊のこと抱きたい…」
そう言いながらも、ミルクでお腹が膨れたせいか、ヒューイのまぶたは眠そうに下がってきていて。
「ん、おっきくなるの待ってる。おやすみ、ヒューイ」
こういうところはまだまだ子供で。
彼の額にキスをすれば、すっかり指を咥えてヒューイは眠りに落ちる。
そんな彼の姿に、ディヤも嬉しそうに、ヒューイの側によって頬にキスを落とした。
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