気ままなサソリ (Page 5)
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あれから、2年の月日が流れた。
湊は現代に戻されて。絶望して自殺を選んでもことごとく失敗し続けた。
何らかの力が働いているのは確かで、すっかりぼろぼろになりながらも生きるしかなかった湊。
そんなある日のことである。湊の目の前に、懐かしい姿。
「ミーのクソ馬鹿野郎」
一瞬、ディヤかとも思ったのだが、どこか雰囲気が違って。
小麦色の肌と金の髪と瞳。そうしてディヤよりもどこかギラギラとした視線。
大きく成長したヒューイが何故か、こちらの世界にいた。
「っ…え、なんで…」
「俺がサソリにお願いしたの。連れ戻せたら、一緒に帰っていいってさ」
そう、彼は自信ありげに、ヒューイは湊の手を取る。
「さ、帰るよ」
湊は混乱したままで。
けれど、彼の手は離せないでいた。
「…っ、ぃや」
自分でも最低だと思う。湊はヒューイが迎えにきたとわかって嬉しくなると同時に、でもどこか残念に思っていて。
ディヤに求められない世界に、戻る勇気なんてなかった。
「…はぁ、聞きたいの?あのクソ親父の話」
以前会った時よりも流暢(りゅうちょう)で、少し口の悪いヒューイ。彼は泣きそうな湊を見つめるとにんまりと笑った。
「ミーがいなくなって以来、抜け殻だよ。使い物にならないから、俺が働いてるくらい。だから、早くしてよ」
湊が何か口にするより早く、意識は飛んでしまい。
目を覚ませば、見慣れたベッドに湊は寝かされており、すっかりやつれたディヤが湊をのぞき込んでいた。
「湊…よかった」
ディヤは湊の体が折れそうなほど強く抱きしめてきて。
そんな様子を、少し離れてヒューイが見ていた。
「言葉もわかるでしょ?サソリが叶えてくれた。俺と親父がこの世界を争いなく、平和に治める限りは、願いを叶えてくれるらしいよ」
そう言って手をひらひらと振って部屋から出て行ったヒューイ。
部屋には湊とディヤだけが残された。
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