腹の奥のあまいもの (Page 4)
士郎は別に、元の生活へと戻りたいとは思わない。
元々、父親が蒸発して、母親も他の男のところを出入りしていたため、士郎はほとんど1人だった。
日々の食事に困ってパンを盗んだのを見つかり、施設に入れられることになったとしても、やっぱり誰とも打ち解けられず。
そもそもどうやって人との距離を縮めていいのかわからないし、近づかれたところで何を返せばいいのかわからない。
優しくしてくれた人が、実は裏で陰口を言っていたこともあり、士郎は、余計に人との距離感がわからなくなっていたのだ。
その点、士郎の中にある生気が旨いからと、そんな彼らが近づいてくる目的は単純で。
何を考えているかわからない人間たちよりも、彼らのほうがずっとわかりやすくて、まだ出会ってからそれほど経っていないものの、士郎は彼らに惹かれていた。
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そうして、翌日のこと。
士郎は、食事を運んできた炎に声をかける。
「…あの、炎。…昨日の答えだけど」
「あぁ、答えが出たか?」
ベッドサイドに食事の乗ったお盆を置いた彼は、士郎の寝ていたベッドに腰掛ける。
士郎の体調も1日眠れば大体回復しており、熱でだるかった身体も、今は快調だ。
「その…2人一緒っていうのは駄目なの?俺、炎のことも泉のことも、選べなくて」
「はぁ?だから言ったろ、俺たち2人でお前の生気食ったら、お前の身体がもたねえんだって」
士郎の言葉に、炎が苛立ったようにそう返す。
「でも、俺、2人とも一緒にいてほしいと思ってるんだ。だって、どっちかだけだったら、飽きられて捨てられたらそれで終わりだろ?けど、2人いればそれもきっと…っ、痛ぁ」
士郎が話し終える前に、炎はいきなりベッドへと押し倒してきた。
「俺たちはお前が、生き辛そうにしてたのを見てる。捨てることはねぇよ」
「でも…」
「まぁ、お前がいいってんなら、断る理由もねぇけど」
真面目な顔でそう告げた彼は、泉の名を呼ぶ。
すると、ドアの外で待機していたのか、泉が焦った顔をしながら士郎のもとへ駆け寄ってきた。
「士郎、昨日は無理して悪かった。俺ももう、食い過ぎないって約束するから」
「うん。泉こそ俺のこと捨てないでね」
そんなふうに士郎が泉に笑いかけていると、いつのまにか背後に移動していた炎によって、体に触れられる。
「今日はお前が遠慮しろよ、泉。昨日の抜け駆け、俺まだ、腹たってんだからな」
服の中に炎の手が移動して、胸の突起に触れられる。
そうして、腰には炎の硬くて熱いものが当てられた。
「わかったよ。今日は入れない。でもまぁ、触るくらいは許してくれるんでしょ?」
「え、ちょ、待って。今からするの?まだ朝だよ」
士郎の言葉も気にせず、炎は士郎の服を脱がしていき、目があった泉はにっこりと笑う。
「まぁ、慣れてよ、士郎。これからも一緒にいるんだしさ」
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