ポップコーンの魔法 (Page 4)
「中のここ…、あったかくて、柔らかい。ときどき締め付けてくる」
理に、ここ、と言われながら、くりくりと押される。
「やっ…!」
思わず体が跳ねる。数本の指が俺の内側で動いている…。
「中、もうちょっとだけ我慢して」
理はそう言って、指を抜いた。持っていかれる感覚に大きな声を上げてしまった。
「やあ…、あー」
指よりももっと大きなものをあてがわれたかと思うと、ぐっと奥に入ってきた。
「あ、あっ、…う、…っ」
理自身が深く入るたびに内臓がせりあがってくるようだった。痛みと慣れない感覚に、気が付けばシーツに丸い染みがいくつもできていた。
目が熱くて、鼻がくずぐずする…。
理が俺の体の両脇に手をついた。耳の後ろに口づけられる。
「中とこうしたいと思ってた。ずっとだよ」
「ほんとう、に…?」
「うん。想像してたよりずっといい。中はきれいだし…」
想像とか、きれいとか言うなとツッコミを入れたかったけれど、言葉にならない。理の声が俺の体から響くような感覚、理が動くと生まれる痛みと熱の心地よさが、繋がっていると意識させられる。
それは嫌な感じじゃない。
好きな人と体を合わせていると、心まで繋がった気になってしまう。温かいものが流れ込んでくるような感じ…。
理を好きでよかった。
理が俺を好きでいてくれてよかった。
動いていい? と尋ねられて、いいよ、と頷く。
理が腰を動かす音や荒い息遣いが耳をつく。腰を進めるたびに俺の内部の熱が大きなうねりとなって脳内を真っ白にする。
「す、き…」
「俺も、中が好きだ」
うわごとのように言った言葉に、理が返してくれた。
理を感じながら閉じた目の裏で、ポップコーンがぽんぽんと跳ねる。
…俺をこんなふうにしたのは理だよ?
理がくれた「好き」を受け取り続けて。
俺はもう、理を好きじゃない世界には戻れないんだ…。
理に突き上げられて、ポップコーンが一斉に弾けた。
理の温かな腕を背中に感じていた。
*****
目が覚めると、ベッドで理に横抱きにされていた。無言で目が合う。
「…ごめん。我慢できなかった…」
理のしおれた様子に、俺は笑った。
「ごめんって言うな。後悔してるみたいに聞こえる」
「そんなことないっ。俺は最高だったっ」
力を込めて言う理がなんだか可愛らしく感じられた。
「俺も後悔してないから」
はっきりと返すと、理の目が一文字になった。
理が、そういえば、と言いながら俺を胸に抱き込む。かすかな汗の匂いに胸がとくとくと走る。
「なんか…、寝言でポップコーンとか言ってたけど。もしかして、映画館のポップコーンの量が少なかったのか?」
さっきまで笑っていたのに、今は眉が思い切り下がっている。
理のくるくる変わる表情が好きだ。そんな表情を見ていたいから、ひとつくらいは内緒でもいいかな、とわがままなことを考える。
「うーん…、秘密」
ずるい、と理にぎゅっと抱き締められる。俺は理の大きな手に頬をすり寄せる。
「…10年間、好きって言い続けるってどんな気持ち?」
「これから10年間、中に好きだと言うから、10年後にまた聞いて?」
とくとくと胸の音が走り出して、心が弾む。
ポップコーンの魔法はまださめない。
Fin.
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