無自覚恋愛
双子の兄、宮寺みつきは、弟のゆずきとは仲がいいわけでも悪いわけでもない。隠れブラコンのゆずきと、そういう関係になっても、ゆずきのことは嫌いじゃない。実は、みつきは少々天然で……。それぞれの恋愛価値観とは?
「みつきー!早く起きなさいって言ってるでしょ!あんたは大学生にもなってまだ親から起こされなきゃいけないの!?」
今朝も、わが家には高らかに母親の声が響き渡る。
うるさいなー、もう少し寝かせてくれてもいいじゃんかって深く布団を被ると、ずっしり何かがのしかかってきた。
「み~つき。早くしないと母さん、部屋まで乗り込んできちゃうよ?」
「……ゆずき、おまえなぁ……誰のせいでこんな……」
「あ~、そっか。まだ、みつきは慣れないのか。男同士のセック」
「バカ!最後まで言わせるかよ!」
双子の弟、ゆずきは、「じゃ、俺は先に行くね」と俺の部屋から出て行った。
にやにや笑う、ゆずきの顔が昨日の夜と重なって、俺はまた体が熱くなった。
「みつき!あんた、いい加減にしなさいよ?」
「大学生にはレポートとかあって大変なんだよ。ゼミもあるし」
食卓には、こんがり焼かれたパンとサラダ、スクランブルエッグにリンゴジュースが並んでいた。
「それを言うなら、ゆずきだって同じでしょうが。どうしてこうも違うのかしらね~?」
母さんはそう言って先週、短く切った髪色の自慢をしてきたかと思うと、単身赴任中の父さんに動画を送りたいから撮れ、と言い出した。
「あのさ、俺、時間ないんだけど」
「父さんとの約束は守りたいの!時間ないのはあんたが悪いからでしょうが」
スマホを渡され、母さんの指示に従った俺は用意された朝食を食べ終え、ソファに置いていたカバンを取り、玄関を出た。
「俺の平和な日常って、どこ行ったんだろ……」
雲一つない空を見上げて呟いた。
近くを通りかかった小学生が一瞬、「なに、こいつ」と言わんばかりの目をしていた。
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