狂い乱れる箱庭
マオは颯と皐月と三人でマンションに暮らしている。皐月とは親友で幼稚園から付き合いのある幼馴染。颯とは中学で出会った友達だった。過去に二人に捕まってから、二人と身体の関係を持っていた。颯とは昼間から、皐月とは入浴中に、そして夜は二人に責められる。自分でも制御できないくらいに快楽に溺れるマオだったが、二人と向かい合うことを決めたのだった。
朝、七時。
リビングのソファーでゴロゴロしながら、慌ただしく動く二人の男を見る。
エプロンをしてキッチンで朝食の準備をするのは颯(はやて)で、スーツを着て出勤する準備をするのは皐月(さつき)。
颯は家事全般を行う専業主夫で、皐月は大手企業のエリート会社員。
その二人と高級タワーマンションの最上階で暮らす俺は立派な『ヒモ』。
大きなソファーで仰向けに転がると、皐月がソファーのそばにしゃがんだ。
「おはよ、マオ」
「…はよー」
朝の挨拶をしながら、皐月の肩に手を置いて体を起こす。
唇を重ねて恒例の『朝の挨拶』。
準備を終えた人から、ご褒美に俺からキスをするという意味不明なもの。
「二人とも、飯できたぞー」
「行こうか、マオ」
「ふぁあ…」
リビングから声がかかり、あくびをしながらテーブルへと歩く。
トースト、サラダ、スープ、スクランブルエッグ。
一人じゃ絶対にありえない、バランスのいい朝食に息を吐いた。
自分の席に来ると、颯がニコニコと俺を見下ろす。
「おはよう、マオ」
「…はよ」
そしてこっちにも俺からキス。
自分から二人にキスをすんのは正直、しんどい。
「いただきまーす」
「皐月は今日も残業?」
「まーな。明日から三連休だから頑張るぜ」
「じゃあ今夜はマオと二人きりだ」
颯は俺の頬に手を伸ばして、口の周りについていたらしいパンのカスをとる。
『二人きり』なんて言うけど、ほぼ毎日のように颯とは二人きりだ。
皐月は会社勤めで、颯は家事をする。
家にいる俺とは『二人きり』になるのは当然。
「夜には帰ってくるっつうの。マオ、帰ってきたら一緒に風呂に入ろうな」
「…ああ。早く帰って来いよ」
「もちろん。イイコで待ってろよ?」
「ああ」
今となっては『イイコ』でいることに抵抗がなくなった。
たとえ、逃げ出したいと思っても不可能だ。
専業主夫兼、監視役のこいつがいる以上、逃げ出すなんてできない。
まぁ、逃げ出したところで捕まるのは目に見えている。
捕まって縛られて、閉じ込められる。
そっちの方が耐えられない。
(昔はこんなんじゃなかったのになぁ…)
颯も皐月も、学生の時は普通の友達だった。
男同士だし、友達だし、こうなるなんて思うわけがない。
今となっては二人のそばを離れる気はないけど。
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