ふたりだけのひみつ
幼馴染みの大学生のお話。すれ違いもあったり、三角関係を匂わせる描写もあったりしますが、最後はハッピーエンドです。少し頭の弱い受けと、口下手でおっとりとした攻めの2人です。襲い受けの描写もあるのでお好きな方にはおすすめです。
ずっと、恭太が好きだった。
だから、当たり前のようにキスをして、セックスをした。
好きという言葉も、付き合おうという言葉も、何もなかったけれど。
ずっと隣にいた友達で、仲間だったからこそ、そんな言葉なんて必要ないと思っていた。
そして、勝手に恭太も同じ気持ちだって勘違いしていたんだ。
「蒼汰、ごめん。もうこんなことやめよう」
いつものように、2人ベッドに倒れ込んで。
ああ、今日もこのまま恭太の腕で眠ってしまおうなんて思っていたのに。
恭太の一言で、すべてが台無し。それどころか、今まで大切に、大切に積み上げてきたものさえ、一気に音をたてて崩れていくような気がした。
どういうつもりで、恭太がそんなことを言ったのかは、俺にもわからない。
けれど、その言葉を否定することも、肯定することもできなかった。
「…なんで」
「なんでって…男同士だし、俺たち友達じゃん」
「じゃあなんで今まで何も言わなかったんだよ、我慢してたってこと?」
「…そういうことじゃないけど」
めんどくさそうに、恭太が視線を逸らした。
あの表情を、きっと俺はこの先も忘れることができない。あれは、恭太が愛想をつかした顔だ。
そばにあった枕を適当に投げて、衣服だけ整えて恭太の家を後にした。
俺の名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、俺は一度も後ろを振り返ることなくその場を後にした。
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「…っていうことが、昨日ありまして」
「ふーん、なんで今更」
次の日の昼休み。俺は親友の光にことのあらましを伝えた。
不思議だねー、なんて言いながらうどんをすする姿。絶妙にムカつくけれど、こんなことを話せるのは光しかいないから仕方ない。
「おーおー、ウワサをすれば…」
顔を上げると、そこには恭太がいた。学食の入り口、クラスメイトの幸也と並んで、仲良さそうに話している。
「…なんであれはよくて、俺はダメなわけ」
「いやいや、蒼汰はセックスだから問題なんでしょ」
「じゃあなんで今まで拒まなかったのかっつー話じゃん、マジ意味不明。理解できない」
早口でまくし立てる俺を見て、光がため息をつく。落ち着いて、って言われたけれど、落ち着いていられるわけがない。
「マジで納得できない。男も女も、誰でもいいくせに俺はダメってかよ」
「まーまー、自暴自棄になるなって」
恭太のほうをちらりと見ると、一瞬目が合ったような気がした。
目を逸らすくらいなら、最初から俺のことなんて見なければいいのに。
そんなことを思いながら、俺は学食の机に突っ伏して、つかの間のふて寝に入った。
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