三日月の夜 (Page 2)

健太の長い指で十分に慣らされてから熱をはらんだ健太自身を受け入れる。痛みと気持ちよさの波が交互に訪れ、細かく出し入れをされるたびに全身がとろとろになっていく。

「美月の中…、あったかくて気持ちいい…」

健太の声が腰に響く。

「恥ずかしいこと…言うな」

顔を両腕で隠そうとすると、健太に手首をそっと掴まれた。
右の手首にある三日月の形に似た傷跡に口づけられる。傷の形をたどるように食まれ、すべての指が口に含まれていく。爪の先を柔らかくて熱い舌でなぞられて、丁寧に体温をすくいとるような動きに体が震えた。
ぞくぞくとした刺激で健太自身を締め付けてしまう。

「あっ、あ…」

僕の中でいっそう大きくなった健太の存在に思わず声が漏れた。

「美月、好き」

健太はそう言いながら僕の両手を自身の背中へと回した。

しびれるように熱い濡れた右手が健太の鼓動を感じ取る。広い背中、汗ばんだ肩甲骨、健太の匂い…、そのどれもがいとおしくて、もっと感じていたくなる。はしたないと思いながらも腰が揺れてしまう。

健太は僕が不足していると言ったけれど、僕も健太が不足していた。きっと健太が思う以上に。

「…今日の美月、すごくいい。…つかまってて」

健太のせっぱ詰まった声に頷くと、健太が腰を大きく動かし始めた。
濡れた音や健太の荒い息に耳を刺激される。激しく揺すられ、生まれる熱さに何も考えられなくなっていた。
高いところへ追い上げられるような感覚に目の前が真っ白になる。健太から与えられる快楽に飲み込まれていく。

「け、ん…たっ、…」

悲鳴のような自分の声を最後に、意識がふつりと途切れた…。

*****

心地よい温度にうっすらと目を開ける。細いアーモンドの形をした健太の目が見えた。ふにゃりと笑うと三日月のようになる。
その近さに思わずのけぞると体に痛みを覚えた。

「ごめん」
と、健太が口を開く。
「なんか…久しぶりだったんでコントロールできなかった…」

申し訳なさそうに言うので、健太の額を右手で小突いてやった。
その手をとられ、指を絡められる。かすかなうずきが指先からじわじわと流れ込む。その甘さにうっとりと目を閉じかけて…、カーテンが少しだけ開いていることに気が付いた。

細い三日月が窓の端にかかっている。

健太が首をひねると、三日月だ、とつぶやいた。

「…俺、三日月を見るたびに美月の手首の傷を思い出すんだ。俺の恋人は名前に月を持っていて、手首にも月を持っているんだなって考えて…くすぐったい気持ちになる」

ほほ笑む健太に、体が再びむずむずし始める。

「ここの三日月、きれいだよ」

健太は僕の傷跡に唇をつけた。

「…あ」

柔らかな刺激に声が出てしまった。

健太の胸に強く抱き込まれる。厚い胸に顔をうずめ、健太の速い胸の音を聞く。そっと顔を上げると、健太と目があった。
どちらからともなく、僕たちは唇を重ねた。

Fin.

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