通い猫に恋をした (Page 2)
「あー、よく考えたら、アオイの部屋って自分ちみてぇだから普通に帰宅してる気分だったわ」
グビリ、男くさい喉仏を上下させてビールを飲むハヤトに、思わず言葉が詰まってしまった。
帰宅って…自分ちって…あークソ!
その程度のリップサービスでもない台詞にときめくとか情けない。
今更2人の関係に名前なんて付けるのは野暮だし、図太い野良猫みたいなハヤトがオレの部屋に通ってくれるその距離感だって好きだ。
あの日ラーメン屋で相席しなければ、職業も生活圏も趣味も違ったオレたちが出会うことはなかっただろう。
こうしてメシ食って酒飲んで、キスしてセックスして触れ合うことだって。
「何だ? アオイ、耳まで赤いぞ」
「余計なところで目敏いのやめて…」
「はは。探偵舐めんなってか?」
「そういうの今求めてないんで」
「お前しょっちゅう可愛いな」
「はあ? メシの最中に口説くなよ」
「口説かれてくれんのか? アオイちゃーん、今日は泊めてくれー」
「今日“も”だろ!」
ハヤトはオレが断るわけないのを知っている。
だからいつも通り、当たり前の顔をして2人の夜を過ごすのだ。
*****
駅近マンション、20畳のリビングとキッチン、15畳の寝室という広めの1LDKがオレの城。
1人で暮らすにしては十分すぎる一室を購入した決め手は、4畳もあるバスルームだった。
シャワーブースと浴槽が別になっていて、窓からは夜景も見えるという癒し空間が突き刺さったのだ。
自分の性格的にも生涯独身だろうなと思っていたし、若くしてマンションを買うことに迷わなかったのも大きいだろうが。
「ほら、ちゃんと手ェつけ」
「無茶、いうな…っ」
男2人で使うことになるとは思っていなかったけど、自慢のバスルームは広くて息苦しさはない。
呼吸が止まりそうなのは、ハヤトの指がオレをいじめるせいだ。
「う、ンッ…シャワー、浴びるだけ、ってェ」
「しょうがないだろ。アオイがいちいちひくついてエロいから」
「ひとのせいに、すんな、アッ」
ジュウッとわざとらしい唾液の音を立てて、ハヤトがオレのうなじに吸い付いた。
壁についた手が滑る。
シャワーから溢れ続けるぬるめのお湯と、ハヤトの体温で身体が溶けてしまいそうだ。
「何だ、もうくたくたか?」
「あっ、ァ、ハヤト、ハヤ、ト、ね、ベッドいこ、ってば」
「まだ指だけだろ? 今日は敏感チャンか? ん?」
別に初めてでもあるまいに、ハヤトの大きい手がオレの尻を鷲掴む感触とか、アナルを解そうとうごめく指とか、わざとらしく耳をねぶって意地悪するところとか、全部に感じてしまう。
気持ちいいんだから仕方ないだろっていいたいけど、口を開くと甘えた声しか出ないんだからいやになる。
けなげ~
アオイくんかわいい
ハヤトさんスパダリに変身しそうな予感w
Nene さん 2021年9月12日