なんだかんだ言ったって、結局。
商店街の焼き鳥屋の大将・グンジと、全身にタトゥーを入れた自称アーティストのナギは恋人同士。その日も、海外から帰ったばかりのナギが部屋で待ち構えていて、2人は激しく愛し合った。しかし、嘘をついていたわけではないけれど秘密にしていたことが思わぬところで明かされてしまい──?
午前10時から午後21時まで営業の焼き鳥屋・鶏一番(とりいちばん)。
都内にある昔ながらの商店街の一角に店を構えて80年、老舗肉屋の分店として始まった人気店だ。
本店の肉屋は姉貴夫婦が継ぐし、気楽に分店営業とか思ったら地元のおじちゃんおばちゃんから若い連中にまで人気が出て、定休日以外は毎日大忙し。
ありがたいことだ。
「こんばんはぁ」
「いらっしゃーい、空いてるとこ座って」
「ビール出すよぉ」
「ついでにおしぼりも持ってってー」
ちょっと細長い間取りの店内は、入り口側半分がテイクアウト、奥側が狭いカウンターで、持ち帰ってよし・食べてってよしの造りにしてある。
客層は顔見知りばかりで、お客が飲み物やらおしぼりやらを勝手に持っていくのも慣れたもの。
手間が省けてありがたいが、そもそもテイクアウト専門店だったのにすぐ食べたい、ちょっと一杯飲ませてくれなんてわがままいわれて始めたんだ、感謝してほしいな。
夕方過ぎ、6席しかないカウンターはあっという間に埋まり、夕食の買い物客もにぎわってきた。
持ち帰りも列ができるし、ひっきりなしに商品を補充しながらバイトに指示を飛ばして店内を駆け回る。
「大将、山椒(さんしょう)焼きと照り焼き上がりました!」
「つくね1皿空きましたー!」
「あいよー、串盛り合わせと手羽先上がったから持ってってー」
「はぁい!」
今日も忙しくてありがたいねぇ。
さて、このまま閉店までもう一頑張りするか。
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