満員電車の恐怖
毎朝の通勤電車。満員電車で通う葵は憂鬱な気分で今日も電車を待っていた。でも今日は何かいつもと違う。後ろから熱い視線を感じていたが葵は気にしないようにして電車を待っていた。そしていざ電車に乗ってぎゅうぎゅうに押しつぶされた時、何か触られた気がして――。
今日も憂鬱。
憂鬱の原因は何てったって満員電車。
毎日毎日、週5回は乗ってるこの電車。
それでも慣れなくて、押し潰されて苦しくて人の肌が触れて気持ちが悪いしいいことなんて何一つとしてない。
憂鬱に感じながら待っていると後ろから何か視線を感じた。
ジーっと全身を見られるような?
ちょっと申し訳ないけど気味悪い視線。
チラっと見てみると相手も目を逸らし、何事もなかったかのようにして持っていた新聞を見ている。
しかし明らかに自分のことを見ていたように感じてしまう。
様子を伺っていると、電車が来たので俺は意を決して満員電車に乗り込んだ。
人混みをすり抜けてスペースを確保しつつ乗り込むのはげんなりするけど何だか慣れてしまっている自分がたまに恐ろしい。
到着駅まであと5駅。といっても急行なので30分はかかる。
長いなぁと思いながら電車に揺られ、上手くバランスを取りながら電車の揺れに身を委ねる。
ふいに大きなカーブが来てバランスを崩し、後ろの人に寄りかかってしまった。
「すみません」
俺は小さな声で謝った。
が、次の瞬間。
腰を後ろから抱きしめられた。
俺は「ん?」と思ったが、満員電車の中では動けない。仕方なく黙って様子伺った。
しばらくしても抱きしめられたまま動かないから「寝ぼけてんのかバランス取るためにやってるのか」と解釈をして大人しく電車に揺られていた。
最初の停車駅になった。
数人しか降りず、乗る人が増えてさらに抱き着いている人と密着した。
ドアが閉まり走り始めて間もなくだった。
ズボンのファスナーが開けられた。
ビックリしたけど、人が多すぎて後ろを振り向くことができない。
俺を抱きしめている手は明らかに男性だ。男が男にこんなことをされている。そう思うだけで恥ずかしくて声を出すこともできなかった。
無言でいることをいいことに、そいつは開いたファスナーの隙間からパンツ越しに俺の肉棒を触ってきた。
「ッー!!」
俺は声にならない声を出してしまった。
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