なんだかんだ言ったって、結局。 (Page 2)
午後22時、片付けや明日の軽い準備も終えて、ようやく終了。
マンションも持ってるけど、店舗の2階が住居スペースなのでほとんど商店街暮らしをしている。
狭くても風呂とトイレはあるし、冷暖房あるし、リノベーション済みだから綺麗だし防音きいてるし不便がないからなぁ。
店の戸締りを確認して狭い階段を上がり、仕事とプライベートの境目であるドアの鍵を開ける。
「はー、今日も1日お疲れさーん」
「おかえり」
「おわっ?!」
返事があって飛び上がる。
びっくりした!
心臓飛び出すかと!
「ナギ! きてたのか!」
「うん。店見たら忙しそうだったから勝手に上がってた」
「ああー、悪い」
「人気店なんだからいいじゃん。それより、おかえりグンジ」
「おー、ただいま」
部屋の明かりを落として映画を観てたらしいナギは、でっかいクッションに埋もれたまま缶ビールを傾けている。
まるで我が家のようにくつろいでいて、平和で何よりだ。
「メシは?」
「食べたい。店からいい匂いがしてて拷問だった」
「はは。鳥焼く匂いってたまんないよなぁ」
1人だった夕食が2人になるだけで気分が上がる。
面倒くさいと手を抜きがちな料理も手間暇を惜しまなくなるのだから現金なものだ。
今でこそ自由に出入りしているナギだが、最初は店のカウンター席にやってきたお客だった。
来店時間はまちまちで午前中にくることもあれば閉店間際にくることもある。
一度、閉店時間に間に合わなくてしょんぼり帰ろうとした姿を見かけたとき、自室に上げて飯を作ったのがきっかけで交流が始まったわけだ。
「そういえば半月ぐらいぶりか。忙しかったのか?」
「ん。ちょっと仕事で海外いってた」
「へえ、何かすげーな。オレ1回もいったことないわ」
「外国いくと食事とか飽きるし、グンジの部屋に帰ってくるとほっとする」
おう…可愛いこといいやがって。
思わず言葉に詰まると、身を乗り出したナギがオレの口唇をついばんでにまりと笑う。
切れ長の目をした美人さんのナギの、悪戯っ子みたいな仕草にすぐ白旗を上げた。
だって可愛いし、お誘いをふいにするほど枯れてないし。
「一緒にお風呂入る?」
「マンションの方と違ってこっちは狭いから無理だって知ってるだろ?」
「ちぇー。仕事終わりのグンジ、美味しそうな匂いしてて好きなのに」
「食欲かよ!」
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