なんだかんだ言ったって、結局。 (Page 4)
翌朝、ちょっと寝不足ではあるけど久々の充足感を感じながら、2人分の朝食を作る。
おにぎりと味噌汁、卵焼き…オーソドックスだが寝起きにはこんなもんでいいだろう。
オレは開店準備があるけど、ナギはゆっくり寝かせてやろうと無理に起こさず、支度をしながらTVをつける。
タイミングよく天気予報に当たって、夕方から雨か…夜は客足が落ちそうだな…とみそ汁をすすった。
「グンジー…」
「ん、起きたか?」
「起きない…」
自分のベッドで掛け布団にくるまってる恋人ってのはまた一段と可愛く見える。
ぽやぽやした目はまだちゃんと開かなくて、自己申告の通り二度寝の体勢に入っているようだ。
「ゆっくり寝とけ」
「うん…ね、グンジ…きょう…おやこどんつくって…」
「ふはっ! わかった、姉貴のとこでいい鶏もらってくるわ」
今日は家にいるらしい、と思うとモチベーションが上がるな、仕事がんばろう。
もごもごいいながら布団にもぐっていったナギを見送り、卵焼きを口に放り込む。
『それでは朝一番のエンタメニュースです』
朝からテンションの高い女子アナの声を聞き流しながら皿を下げる。
たまに映画は観るが、ドラマだの音楽だのはなかなか手が出ない。
特にアイドルとか男も女も興味がないし。
『──が昨日帰国しました。彼らはアメリカの音楽チャートで1位を獲得という快挙を成し遂げました』
『日本人アーティストだと過去片手で足りるぐらいしかランクインしていない狭き門、素晴らしいですね』
『これから音楽番組やコンサートなどの予定はあるんでしょうか?』
『実は彼らは日本国内ではあまり活動していないんですよ、音楽番組も専門チャンネル、インタビューも専門誌ばかりで』
『えー、もったいない。ぜひインタビューしたいです』
きゃっきゃと騒ぐ声が激しい音にかき消されて、思わずTVに目を向ける。
海外で評価されるミュージシャン、バンド紹介のミュージックビデオが流れる画面を見て、オレはシンクに皿を落としてしまった。
ボーカル1人、ギター2人、ベース1人、ドラム1人の5人組…バンドとしてはオーソドックスな編成なことぐらいはわかる。
激しいライトの点滅と音の波、ちょっとハスキー気味な声が生々しくて腹の底から高揚する音楽。
──…なるほど、これはかっこいい。
門外漢のオレでもわかる。
どちらかと聞かれれば好きだ。
けれど。
「──…ナギ。ナーギちゃーん」
「んん…ねてる…」
「いっぱい寝ていいからちょっとだけその可愛いお耳貸してくれ」
「うん…? グンジ…?」
「ナギよ。TVですげぇミュージシャン紹介されてんだけど、オレにはお前が歌ってるように見えるんだが」
「あぁー…」
ミュージックビデオとは違う、色疲れしたセクシーな掠れ声がいやらしいんだが、今は置いておく。
きらびやかなステージで見たことのない衣装を着てメイクをしていても、オレがナギを間違えるわけがない。
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