なんだかんだ言ったって、結局。 (Page 5)
「おま…アーティストっていってたのは…」
「うたうたってる」
「海外いってたのは…」
「こないだまでEUのイベントにさんかしてた」
「アメリカの音楽チャートで1位獲得したって…」
「ほめてぇ」
よしよしして、ぎゅってしてキスしてやると、ナギは眠くて温かい身体をオレにくっつけて幸せそうに微笑んだ。
可愛いけど…え、オレ頭が回っていないんだが?
「…グンジは、うたってないオレがすきでしょ」
「そりゃ、歌手だったの今初めて知ったぐらいだしな」
「ただのオレをあいしてくれて…ありがと」
「…バカだな、ナギ」
急なことでびっくりはした、いやまだ現実味がないというか理解が追い付いていないのはあるけど。
そもそもナギが有名人だから好きになったわけじゃない。
それこそ、タトゥーだらけでその道のお兄さんかと疑ったぐらいだったが、それはそれだ。
「驚いたけど、好きなのは変わんないよ」
「はは…グンジはオレのこと、だいすきだもんね…」
すう、と呼吸が深くなってナギが眠った。
何だろう、朝から情緒が乱高下してめまいしてきたぞ。
でも、オレのベッドですやすや寝ているのはオレの可愛い恋人だ。
そう、結局のところ何も変わりやしない。
「親子丼だっけ…姉貴に鶏肉頼まなきゃ」
赤だしのみそ汁に、焼き鳥もつけてビールでも開けよう。
オレじゃあ気の利いたセリフは出てこないけど、美味いものなら用意してやれる。
いろいろ聞きたいことはあるけれど。
──…2人で食べて、笑って、隣に座ってくっ付いていられればそれだけでいい。
Fin.
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