月と太陽は巡り合えない

・作

人気アイドルグループ「コスモ」に所属する俺、太陽(たいよう)はマネージャーの天満(あまみ)に秘かに恋心を抱いていた。天満もブレイクできなかった元アイドルで、昔から一緒に夢を語り合ってきた大切な相棒。ある日、彼から心に決めた相手ができたという話をされてしまい…。

俺はアイドルになることを夢見て、努力を続けて今や「コスモ」というグループのセンターを務めることができるところまできた。

俺自身、売れたことが奇跡のようで今でも信じられない。

それもこれも、俺たちと一緒に頑張り続けてくれたマネージャー、天満のサポートも大きかった。

*****

天満も昔は一緒にアイドル養成所で光り輝くステージを目指して、頑張っていた。

「俺、絶対テレビに出てお客さんの前で歌うんだ」

「太陽らしいなぁ」

「天満は?」

「僕は…できたら、いいなぁ」

*****

そんな話をしたこともあった。けれど、コスモのメンバーに選ばれず、そのまま彼は養成所をやめてしまった。

大学を卒業していたこともあり、事務所の社長にうちでアイドルのプロデュースをしないかと誘われ、マネージャーになり、今に至る。という感じだ。

ある日、彼から珍しく飲みにいかないかと誘われた。

「話したいことがあってさ」

何だろうと思いつつ、俺は久しぶりの飲みが嬉しくて快諾した。

*****

2人きりの個室で酒と食事が運ばれてくる。

初めは今の仕事の話で盛り上がりながら、食事に舌鼓を打つ。

「んで、なんだよ。話って…」

「いや、さ。俺、結婚することになりそうなんだ」

と言って、女の子と2人の写真をスマートフォンで見せてくれた。

元気そうで、かわいい女の子だった。

「…あっ、そっか。そうなんだ、おめ、でと…」

俺は素直に喜んであげることができなかった。それもそうだ。俺はこいつのことが養成所のころから恋愛的な意味で、好きだった。

一緒に頑張ってきて、夢を語り合った大切な相棒。

ずっと一緒にいて、支えてくれたこいつのことが好きだった。でも、そんなこと言えるわけがなかった。立場、性別。すべてが邪魔になった。

ふと、ぽろぽろと涙がこぼれだしてきた。俺のため込んでいた気持ちが濁流みたいに噴出した。

「あのさ、天満。一つだけ、お願いが、あるんだ…」

俺はか細い声でそう言った。彼は、俺の気持ちを察していたみたいに悲しそうにほほ笑んだ。

*****

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