まるで恋人のように (Page 2)
朝比奈を抱きながら弟を重ねる。朝比奈にキスをして、その体に触れて、体をつなぐ。
朝比奈が濡れた声を上げ、体を震わせてうっとりとする顔を見るたびに、弟もこんなふうになるのかと思った。その気持ちが朝比奈との行為をさらに深いものにしていった。
今夜もそうだ。
弟の体に口づけていると想像しながら、朝比奈の胸や腹、背中に唇を寄せる。両ひざを持ち上げて脚を開かせ、ももの内側を強く吸い上げれば、朝比奈は身を震わせて「あっ」と短い声を上げた。
下腹の繁(しげ)みが頬に触れ、もっと乱したいという気持ちに駆り立てられる。
「あ、あっ、やっ…、やあ…!」
脚の付け根に舌を沿わせ、先走りの滴をこぼしている朝比奈自身を口に含む。先端の敏感なところを何度も舌でなぞりながら、朝比奈の後ろのくぼみに指の先を入れる。先走りで湿ったそこが、きゅ、と指に吸い付く感覚があった。
ふくらんだ朝比奈自身の裏側を舌で舐め上げてから、指の先が埋まったくぼみを舌で刺激する。
途切れることのない朝比奈の高い声と湿った音が、明かりを落とした部屋に満ちていく。
指と舌で十分に慣らした朝比奈の後ろの口に、俺自身を深くうずめる。俺の形にすんなりとなじんだそこはざわめき、俺を刺激する。
抜き差しするたびに朝比奈は、三春、と俺の名字をしきりにこぼした。
…もうわかっているんだ。
弟だったら俺の名字は呼ばない。
お互いをつないでいる縁を指でそっとなぞる。
「ああっ、…み、はる…」
朝比奈のうるんだ瞳が、薄暗い部屋の中でも光って見える。やっぱりきれいだ。
弟を重ねるのは最初だけ。行為が深くなればなるほど、朝比奈を悦(よろこ)ばせることだけを考える。
汗で湿った胸を撫で、ぷくりと硬くなった胸の粒に触れてやれば、びくりと体を揺らす。朝比奈がいちばん敏感に感じるところだ。
朝比奈の体のいいところはあらかたわかるのに、心の内だけはいまだにわからない。
たくさん体をつなげてきたのに。
「…朝比奈は…さ、好きな人はいないのか…」
「ここ、で…、きく、こと…か」
荒い息とともに返ってきた言葉は苦しそうだ。
俺が黙っていると、朝比奈はゆるく首を振った。
「みは、る…と、…」
同じだよ、という声が聞こえてきた。その声が泣いているみたいに震えていたことに、俺は気づいてしまった。
…朝比奈にも好きな人はいる。
その気持ちは伝えられない…、ということか。
俺はどうして今まで失念していたんだろう。朝比奈の好きな人のことを。
朝比奈も俺に好きな人を重ねて抱かれているのだろうか。
どんなに体を重ねても好きな人の存在を心から消すことはできない。
それでも朝比奈との行為をやめられないのは…。
弟以上に好きな人になってしまったから。
俺はつながったままの朝比奈に体を近づける。小さくうめいた朝比奈の唇をそっとふさいだ。
「…明日の朝。なにを食べる?」
もう、と朝比奈がくつくつと笑う。その振動が伝わってくる気がした。
「いま…、きく…こと、…?」
恋人みたいなことを訊くなよ、となおも笑った。
…恋人みたいなことを、今からでも始めてみようか。
そう言ったら、朝比奈はどんな顔をするだろうか?
Fin.
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