今時の淫魔の事情
淫魔であるライトは、自由気ままな遊び人として、男女問わずお持ち帰りを繰り返し充実した生活を送っていた。それがある日、力負けした相手に返り討ちにあい不本意ながらも犯されてしまった。ライトはリベンジをするために、再度男に近づいた。そして淫魔特製の媚薬を男の飲み物に仕込み自宅に連れ帰ったものの、体に異変が起こったのは自分の方だった——!
「ひあっ、あんっ、もうっはなし、てっ」
後ろから貫かれて喘ぐ声は自分のものとは思いたくない。濡れた音は聴覚を溶かし、自分の境界線が曖昧になった気がする。
「まだまだ、足らないだろ?遠慮なくすんなよ」
「きゃんっ!や、そこもう、やめっ」
嫌がればそこをさらに責められる。こうしてもう何度、中に出されたかわからない。でもそれは、心とは裏腹に確実に自分の魂を満たしていく。
*****
現代、人間たちは性別やジェンダーなどさまざまな生き方が選べるようになった。それは人間だけでなく、闇に生きる彼らもまた同じであった。
現代では、ヴァンパイアは日傘をさして昼の街を歩き、狼男はミラーボールの下で踊りまくり、死神は大学院に通っている。人間と変わらない生活を送っているのだ。
下級悪魔である淫魔のライトも、現代に溶け込んでいる例のひとりだ。相手が死ぬまで精気を奪ってしまっては刑事事件になってしまうので、現代の淫魔はほどほどしかいただかない。さらに言ってしまえば、淫魔たちも現代では性別もジェンダーも好き勝手にやっているので、女同士がいい淫魔もいれば、男同士がいい奴もいる。
ライトは男なので基本的には女性から精気をいただくのだが、相手が男でも十分に堪能できるタイプだった。それでもライトは、掘られるのはゴメンだと、これまではいつも挿れる側を楽しんできた。界隈では、有名な遊び人として多数の店に出入りしてはお持ち帰りを繰り返し、毎夜精気を吸い取っていたのだ。
それが、先週この店で出会った背格好も大して変わらない男に、持ち帰られて力で負け逆に犯されたのだ。
忘れもしないこの銀髪の男に!
「こんばんは、この前はどうも」
ライトは、そう声をかけると男の隣に座った。
少し猫背気味に座った男は振り返り、長い前髪の下から精気に溢れた眼差しをのぞかせた。以前会った時もそうだった。隅っこにいるわりに存在感が気になり、気だるげに見えて精気に溢れている。
「今日も1人?」
「…オレ、お前のせいであの家追い出されんだけど」
ライトはあの日、組み敷かれた腹いせにユニットバスの蛇口を全開にし、排水口に蓋をして帰ったのだ。そのせいで、家中浸水して階下に水漏れまでしてしまったらしい。
「まじで?!軽い気持ちのイタズラだったんだよ。ごめんな?」
チビチビと飲んでいた男のグラスが空になった。ライトはそれを見計らうと、自分のグラスも一気に傾け飲み干した。
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