独占愛はノーカットでお送りします
新人俳優の早瀬颯真(はやせそうま)。ハードな芸能活動を支えてくれるのは、同棲中の恋人・佐久間京(さくまきょう)だ。包容力ある年上の京に甘える颯真。颯真の出演するドラマを観た二人だが、その回には颯真と女優とのラブシーンが。意外にも嫉妬深い京は、颯真をソファーに押し倒して――!?
芸能界が華やかだなんて、誰が言ったんだ。
「うぅ~…疲れた…」
新人俳優の俺、早瀬颯真は、フラフラとした足取りで自宅マンションのエントランスを抜けた。
今日のドラマ撮影が終わったのは、夜の十一時過ぎ。
明日はオフだけど、昼からは演技スクールでレッスンを受けなければならない。
イベントや雑誌の仕事もあるし、ずっと働き詰めの毎日だ。
そんな俺が、健康体でいられるのは何故か。
「ただいまぁ、京さん!」
玄関のドアを開けて、俺は甘えた声を上げた。
その声を聞きつけて、玄関にやって来た俺の恋人――佐久間京さんは、柔らかな笑顔で迎えてくれた。
「おかえり、僕の天使」
*****
二年前、とあるイケメンコンテストで入賞した俺は、芸能界に足を踏み入れることになった。
脇役で出た初めてのドラマ出演が好評で、今回、深夜ドラマの主役に抜擢(ばってき)されたのだ。
過酷な芸能活動を支えてくれるのは、半年前から同棲している京さんだ。
仕事漬けの俺に代わって、家事全般を引き受けてくれている。
「あ~、京さぁん。俺、今日も頑張ったよぉ~」
自分よりも背が高い京さんに抱き付くと、よしよしと頭を撫でてくれた。
22歳の俺より10歳も年上なので、大人の包容力につい甘えてしまう。
「夜遅いから、軽い食事がいいよね。トマトリゾットを作ったんだけど、どうかな?」
優しくそんなことを言われて、俺は容易く陥落した。
「うぅ…食べたぁい。京さん、ありがとう!」
「どういたしまして。ほらほら、腕を離してくれないと、準備ができないよ」
身の回りの世話を献身的に焼いてくれる京さん。
俺はもう、彼がいないと生きられない身体になっていた。
*****
トマトリゾットは美味しくて、仕事の話を聞いてくれる京さんは優しくて、幸せでいっぱいだった。
会社員の京さんと出会ったのは、大人の男になりたい!と意気込んで入ってみたオシャレなバーでだった。
意気込みとは裏腹に、強いお酒で酔ってしまった俺を介抱してくれたのだ。
京さんは俺の初めての恋人だ。
芸能界でも通用しそうな彫りの深い華やかな顔立ちに、すらっとした長身。
性格も優しいし、仕事も家事もデキるし、完璧過ぎる人だ。
一生付いていきたいな、なんて思っていると。
「あ、そろそろ、颯真君が出るドラマが始まるね。一緒に観ようか」
京さんがテレビをつけた。
二人でソファーに移動しながら、今夜はちょっと気まずいな、と思う。
何故なら、この回は…。
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