後輩に脅されまして (Page 4)

告白しよう。俺は童貞処女だ。男が好きと自覚してからずっと、性処理は妄想で済ませてきた。経験がなかったからこそ、自慰で満足できていたのだろう。

キスだけでこんな快感。

もう、妄想では足りない。

「ふぁ…ん、あ…」

唇ごとかみつくように貪られ、息がつらい。鼻だろ。鼻で呼吸するんだ。でも上手くいかない。口の端から唾液が零れる。
歯列の裏、舌先でこすられると気持ちいい。
されるがまま、与えられる快感に浸っていると、突然下肢がひやりとした。ペニスをつかまれ、現実に引き戻される。

「んっ、あっ、え」

「先輩の、もうドロドロ。玄関先で襲われるの、初めてですか?」

問いかける小野原の唇は、唾液に濡れていた。へろへろになった俺とは違い、涼しい顔だ。

「は、じめてでは、ない」

玄関で襲われるシチュエーションなんて、王道だろ。

「…。へぇ、そうでしたか」

小野原は低くうめくように言った。二番煎じと誤解させたか?

「いや、でも、こっちのほうが、すごく、気持ちいいよ」

付け加えてから、ハッとした。何をバカ正直に告白しているのだ。
訂正しようとしたが、小野原がふわりとおかしそうに笑ったので、言葉にはできなかった。

「…ふふ。ホント、先輩って」

意味深に区切られた言葉に首を傾げる。
問いかける前に、唇が下りてきた。ゆっくりと味わうような口づけに、自分が甘いお菓子になったような心地がした。ペニスを上下に扱かれて、腰が揺れる。
他人の手は――小野原の手は、意外と硬く、熱い。

「…ねえ、先輩。襲われてるくせに、そんな顔して、――食べちゃいますよ」

「ん、ぁ、ぅ…ん、あ、ん…すご、きもち…」

「このまま、――このまま、抱きたい」

ねぇ、お願い先輩。

小野原の懇願にも似た切ない声に、俺は小さくうなずいた。

――バカは小野原のほうだ。
ホント、脅しの意味をわかっちゃいない。

*****

玄関でさんざんイカされた俺は、ぐったりと脱力した体を抱き上げられ、寝室のベッドに運ばれた。ほとんど変わらない体格のどこにそんな力が、とぎょっとしたが、スーツを脱いだ小野原の体は、俺の貧弱なそれとかけ離れていて、度肝を抜かれた。

腹筋、どうしたらそんなバキバキになるの。

「…ね、先輩。いつも後ろ、弄ってるんですか」

「いつ、も、というか…、前で足りないと、うん…ひ、あっ、そこ、んっ」

「ふぅん」

小野原の言いたいことは大体わかる。
俺の後ろは、他人が触ってもやはりほぐれているらしい。

「…最近、誰かに抱かれました?」

「ぅん、あ、へ、いや、誰って、誰も…ん、ぁ」

「…え?」

後ろを弄っていた指が急に奥へと押し込まれ、いいところを擦る。

「ひぁっ…!」

鋭い刺激が全身に走り、腰が跳ねた。ぱたた、と飛沫が腹に飛び散って、室内に、俺の恥ずかしい吐息だけが響いた。

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