夢と現~脳イキセックス~
『夢と現を見分けるのは困難である』──少年のような容姿の天才メルに従事する青年ハビ。独自の研究の成果にてほぼ永遠とも言える命を持つメルは次の肉体を作る為ハビの遺伝子を採取するが、ハビの様子がおかしくなり、2人の真実が明らかになる。
夢と現の定義など無いに等しく、夢を見ているのか、現実を生きているのかなど本人にさえわからないのだ。
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「バイタルは?」
「問題ありません、続行可能です」
忙しなく動く彼の人の手は一切無駄がなく、まるで鍵盤の上を踊るピアニストの手のようにしなやかで美しさを覚えるほど。
広い宇宙の中、狭い宇宙船の中で行われる人命救助。の人命救助に当たるのはたった二人の船医である。
一人は青年。齢28に差し掛かり成熟した男性である。彼が指示を仰ぎ、補佐をしている相手は奇妙なことにどう見ても彼より年下であり、まだあどけなさを残した少年にしか見えなかった。
「終わりだ。ふむ…こんなにも他の生物と混ざり合った状態で持ち直すとは…」
「メル先生のお力がなければ助からなかったでしょう」
「ワシは天才じゃからなぁ」
カカカ、と軽快に笑うメルを尻目に青年はあくせくと患者を医療ポッドへ移し、片づけを始める。
「ハビは真面目じゃのう」
「ふふ、先生が不真面目なだけですよ。おっと、失礼しました」
ハビはくすりと笑う。
「流石に数百年生きてたら真面目に生きるのも面倒じゃよ」
「そう、かもしれませんね。先生、その身体いつ頃まで使うんですか?」
その言葉に唸るメル。彼は脳をチップへ移し、新しい肉体へ移植を繰り返し言わば永遠の命を以てして『医療』という分野に身を置いている。当然肉体は老いていき、そしてどうしてかその肉体がある一定を生きると拒絶反応が強くなり、メルのチップを破壊してしまう。
「そうじゃな…ハビもいることだし、そろそろスペアを作ってもいい頃だな」
「わかりました。私が生きている内に何度取り換えるんでしょうね…」
赤子へチップを移したところでどうにもならない。肉体年齢がある程度行っている必要がある。培養ポッドで急速に発達させるがそれでも数日で、とはいかない。
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