Alraune~繋と自慰と~ (Page 3)
ざあざあというノイズ。
それがかき消そうとするお互いが繋がる水音と吐息、嬌声。
「ひあっ、あつ、い…、あん、じ、あんじっ」
「中、凄い締め付けてきますよ」
ぎゅうぎゅうと締め付け絞りつくさんと蠢(うごめ)く中の感触と背を這う快感に耐えながらその腰を打ち付け続ける。
「あっ、そご、だめっ!」
「でも明さんここ好きだよね?」
ゴリゴリと一か所を一定のリズムで突き上げると、びゅるびゅると白濁した体液を床に零し悲鳴に近い嬌声を上げるので、その口に指を突っ込み舌を指で挟みこむ。
「ふあ、あんひ…、ひゃめ…こえがまんれきな…」
「だからこうして押さえてるんですよ」
ぬるりとした唾液が指に絡み、蠢く舌が指を絡めとる。
何度も突き上げ、何度も白濁した体液を零し、何度も何度も――。
「明さん、欲しいですか?」
その舌を開放すると、彼は懇願する。
中に、君を感じさせて欲しい、と。
いっそう速く強く突き上げ、迫りくる射精感に心の内は冷たい。
「イきますよ」
「ひっ、あぁ、あぁあああああっ!」
どくどくと波打つペニスを引き抜くと、その引っかかりに彼は最後に大きく喘ぎ崩れ落ちる。
そうして、大きく息をつくと身を捩りこちらを見上げ笑うのだ。
「君の心の内は冷えて冷静になったのかい?」
*****
梅雨はまだ明けない。ざあざあと降り続くその雨はいっそう陰鬱な気持ちにさせてくれる。
「何かわかったら連絡するよ」
「お願いします」
そう言葉を交わし俺は大学病院を後にした。
現場へ何度も足を運び、関係者や近隣への聞き込み。調書の見直し。
旧友というべきなのか。それとも憧れだったのか。
医師としていつも忙しなく働いていた明の傍にいて恥ずかしくない存在になりたい、そう思って警察官を目指し、薄っぺらな正義感を振りかざし、勉学・訓練に勤しんだ。
その甲斐あって、28歳という若さで警部補という立ち位置で捜査一課へ配属され、そうして彼の仕事ぶりも目に出来た。
「くっ…」
暗い部屋で一人慰める。
どうあがこうとも男である以上生理的な欲。そして思い出される明の淫らな姿。
張り巡らされる事件への推理。
浮かんでは消える様々な思いが雨の音に溶けていく。
「明さん…」
先端から零れ落ちる先走りがにちにちと卑猥な音をたて、扱きあげる手の速度が上がっていく。
暗く静かな室内に、荒い吐息と卑猥な音、そしてノイズ。
「明さん…」
彼が求めるのは熱だけで気持ちではない。だからこそ繋がれば冷えていく心に悲しみを覚えた。
「くっ———はぁ……」
大きく波打ち、熱いソレを吐き出すと虚無感に襲われた。
だが。
「明さんの仕事を減らせれたらな」
そんな———薄っぺらな、正義感を携えて呟いた。
その時スマホがうるさい程の電子音を鳴らし震えた。
「ああ、闇慈。君に伝えたいことがあるんだ。一つ事件についてわかったことがある。これから出れるかい?」
「ええ、大丈夫です」
「じゃあ、21時に〇〇区のいつものファミレスでいい?」
「わかりました」
彼は———その約束の場に訪れなかった。
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