史上最高のバースデーパーティー ~ハタチは特別一生モノ!~
久我山(くがやま)家の長男の友哉(ゆうや)と次男の将也(まさや)は二つ違いの兄弟。実家を出て二人で暮らすほど仲が良く、弟の二十歳の誕生日は友哉にとって特別なものだった。しかし、同時に将也にも秘めた思いがあり…。弟溺愛な兄バカと、ブラコンが過ぎた弟のバースデーパーティー。
今日は、とても大事な人の誕生日。
朝から張り切って支度します。
*****
久我山家。
この家には二人兄弟がいる。
それはそれは仲が良く、弟の将也は大学入学を機に家を出ると、二つ年上の兄の友哉と一緒に暮らすと約束していた。
そして、約束通り先に独り暮らしをしていた兄の元に身を置いている。
もちろん部屋は二人暮らし向けの2DK。
「お前が来る前はガランとして寂しかったんだぜ?」
将也が住み始めた頃、酒に酔った友哉がポロリと溢した一言。
その言葉が将也は何とも言えず嬉しかった。
そして、月日は流れ、ここで迎える二回目の将也の誕生日。
それも、ハタチの。
「これで、俺も兄ちゃんと一緒に酒飲めるね!」
いつぞやの嬉しそうに笑う弟の台詞に兄は喜びを隠せず、にやけ顔が止まらない。
そんなわけで、肩にかかるかどうか程の茶髪を後ろに束ね、エプロンを身に着けキッチンに立つ友哉。
鼻歌混じりに料理の支度をしていくが…。
「ああ!焦げた!」
「あっ、塩と砂糖間違えた!」
ミスの連発である。
将也は学校に行っている。
「あー、これじゃ間に合わねぇ!」
頭を抱えてシンクの前にしゃがみ込む。
テーブルには失敗した料理の山が無惨な姿で放置されていた。
「ただいまー」
玄関で明るい弟の声が響く。
「っ!ま、将也、もう帰って来たのか?」
「うん?今日はサークルもバイトもないから」
慌てた様子で玄関に顔を出す友哉に不思議そうに首を傾げる。
「あれ?兄貴、なんかいい匂いする!」
パッと表情を明るくした将也がキッチンへ駆け込むと…。
「…大惨事?」
焦げたハンバーグに崩れたオムライス、衣が剥がれた上に丸まったエビフライ。どれも上手くできていれば将也の大好物だ。
「悪い…失敗した」
目を瞬かせながら振り返る弟に申し訳なさそうに呟く。
「へへ、ありがと。兄ちゃん!」
嬉しそうに笑って抱き着いてくる将也に思わず目を見開く友哉。「兄ちゃん」と呼んでくれるのは感情が嬉しい方へ振れている時だ。
「へ?で、でも、こんなの食えたもんじゃないだろ?」
「食べるよ!兄ちゃんが頑張って作ってくれたんだから」
満面の笑みを浮かべる弟が眩しい。
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